“痛み”を取るデジタル化提案 GEの戦略実践によるノウハウ提供(1/4 ページ)

» 2017年06月29日 06時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、自社開発した産業用IoT(モノのインターネット)プラットフォーム「Predix」を2016年2月から提供している。これは、産業用機器から収集するデータを蓄積、分析する基盤で、設備の管理などを行うアプリケーションを使用したり、開発したりするための基盤となる。GEは、自社の工場で推進してきたデジタルトランスフォーメーション(DX)の技術や知見を生かして、「デジタル・インダストリアル・カンパニー」へと変貌を遂げようとしている。

 DXに関する有識者や専門家たちの意見をお伝えするシリーズ特集。今回は、GEデジタル・ジャパンのコマーシャルリーダー、ワヴデ・マンダール氏にGEの取り組みについて聞いた。

photo 医療機器を製造するGEヘルスケア・ジャパンの日野工場(東京都日野市、GEジャパン提供)

パートナーは650社

―GEのデジタル事業の規模について。

 2016年は、デジタル関連の受注額が前年比22%増の40億ドルでした。17年は50億ドルを目標にしており、そのうちPredixで10億ドルを目指しています。20年には、全体で150億ドルの目標を掲げています。また、Predixのアプリ開発などを担ってもらうパートナー企業は650社に上ります。

―Predix開発のきっかけは何ですか。

 GEでは、もともと製造系ソフトウェアを作っていました。自社工場で航空機のエンジンなどを製造していると、工場の運用、モニタリング用のソフトが必要になるのです。しかし、時代が変わってくると、お客さんにデータをただ見せるだけではなく、データから得られるインテリジェンス(重要な情報)を生かして、いかに効率良くできるかということを考え始めました。そういったソフトウェアを自社用に作ってみて、効果があるということが明らかになったのです。

 また、全く想定外のところから競争相手が出てくる時代になったことも1つのきっかけです。例えば、携帯電話。昔はソニーエリクソン、ノキア、モトローラといったメーカーが携帯電話市場のリーダーでした。しかし、アップルのようなプレーヤーが入ってきて、その市場を変えてしまった。従来のマーケットリーダーの存在感は消えてしまいました。そういった危機感を持って動くのがGEという会社です。タービンも飛行機のエンジンも医療機器も、自分たちよりも他の会社がうまくできてしまうんじゃないか、という危機感が常にあります。そこで、ソフトウェアをプラットフォーム化して販売していく、という戦略を取っています。

顧客の“痛み”を見つける

photo GEデジタル・ジャパンのコマーシャルリーダー、ワヴデ・マンダール氏

―企業に対して、何を重視して提案をしていますか。

 プラットフォームを使って、いかに“outcome”(成果)を提供していくか、が非常に重要です。従来のやり方だと、「こういうことをやるからこれだけお金をください」という提案でした。私たちが提案するのは、お客さんのビジネスを見て、どこがやりにくいか、どこに無駄が発生しているのかという課題を認識し、その課題を解決することでコストを何%削減できる、という考え方。そのため、「実践することで○億円のコスト削減ができます。私たちには何%ください」という、成果を重要視した提案になります。

 そのような提案をするためには、お客さんがどこに“痛み”を持っているかを知ることがポイントになります。例えば、原材料を調達してきて、製品を作り、それを包装して出荷して、売り上げになる。そのプロセスについて、私たちが全部管理したい、というのは、1世代前のパッケージ導入のやり方です。そうではなくて、その中でも最も痛みがある工程を見直します。例えば、特別な薬を作っていて、特別な環境で運ばないといけないため出荷費用が非常に高いという課題があったとすれば、トラックの温度調節や台数などについて、最適化するためのデータを示すことができます。

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