なぜ上原を取材する日本のメディアは少ないのか。ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手やテキサス・レンジャーズのダルビッシュ有投手、ロサンゼルス・ドジャースの前田健太投手、現在は故障離脱中のシアトル・マリナーズの岩隈久志ら先発投手と違って、日々投げる可能性があるリリーフの上原にはどうしてもピンポイント取材が難しい事情があるからだ。日本のメディア各社も昨今の経費削減の煽(あお)りを受け、米国にわざわざ人を派遣して専属でチーム同行取材をさせることが困難になっている理由もある。
そして多くの日本メディアには残念ながらまだまだ「中継ぎ」よりも「先発」のほうが注目されるという古い考え方も残っているようだ。
いずれにせよ、そういう日本メディアがなかなか取材に訪れないような状況下においても上原は自分を見失うことなく、黙々と仕事をこなしている。注目されないのであれば、他の日本人先発投手以上にがんばって活躍して見返してやるのみ――。きっと上原の心中はそんな感じであろう。巨人時代からずっとポリシーとしている「雑草魂」は42歳の現在も心中に抱き続けているからだ。
上原が基本的に他の日本人メジャーリーガーの「ついで」として取材に来られることを極端に嫌うのは、そんな雑草魂に基く負けず嫌いの気持ちがあるからに違いない。オッサンになったって、どんなヤツにも負ける気はしない。もしこれだけがんばっても注目されないのならば、さらにがんばってそういうヤツらをギャフンと言わせてやる――。
42歳のすご過ぎるオジサンのプレーを見ていると、彼の内面からそんな心の叫びが伝わってくるような気がしてならない。そして巨人時代に「雑草魂」をベースにしながら不屈のエースとして君臨していた若いころのようにこれだけ年齢を重ねても、いい意味で変わらずギラギラしていることに気付かされる。いやはや、うらやましい限りだ。
今年で44歳を迎えるイチロー、そして42歳の上原。2人の「OVER40」がグラウンドで奮闘している姿から我々も教えられることはさまざまな観点で多いのではないだろうか。
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2016年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
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