しかし、各都道府県ならではの地元の味といっても候補は数多くあり、絞り込みは容易ではない。そこで味を決めるに当たっては、各都道府県庁の担当者とカルビーの現地営業担当者、荒木さんら本社スタッフをメンバーにして、各地でワークショップを開催することにした。
地元の味としてふさわしい味をリストアップすることからスタート。その後絞り込み、残った味を同社が試作し、試食した上でワークショップメンバーが納得したものを商品化することにした。どこの都道府県でも味の候補が100案近く出たが、「ポテトチップスに合うかどうか」「希少な原料を使うかどうか」「小売店がどう評価するか」といった視点から10案ほどに絞り込み、その中から決めた。
決まったら味のつくり込みに入る。試作回数は味ごとに異なるが、例えば滋賀県の「鮒ずし味」は約60回つくった。「鮒ずしを苦手な人にも食べていただきたいのでポテトチップスとしてのおいしさを追求する一方、鮒ずしの特徴も出さなければなりませんでした」と荒木さん。通常であれば、試作は20〜30回程度で済むが、「香りがもう少しあると良い」「もっと鮒ずしらしさを出せないか」といった滋賀県庁の担当者からの要望に応えつつ、ポテトチップスのおいしさをも感じられるバランス取りに苦心した。
また、ワークショップでは味だけでなくパッケージも検討した。得られたアイデアを元にしてカルビーが具体的なデザイン案を複数つくって提示し、都道府県庁の担当者が評価した。
自治体によっては、パッケージデザインに強いこだわりを持つところもあった。その一例が神奈川県。地元の味として決まった「シューマイ味」のパッケージを決めるに当たり、「どうしたら神奈川県の良さが伝わるか、ということに相当こだわった」と荒木さん。シューマイらしさが伝わる中華的なイメージも検討したが、旧横浜駅の様子を描いた浮世絵を上半分にあしらい、歴史と文化を感じる神奈川らしいものに仕上げた。
味づくりにしろパッケージづくりにしろ、進み方は都道府県ごとに異なり、一様ではない。このプロジェクトの難しさはまさにこの点にあり、各都道府県の思いやこだわりを十分理解した上で丁寧に進めていく必要があった。
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