廃線と廃車、近江鉄道が抱える2つの危機杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)

» 2018年03月02日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

留置された機関車たちはどうなる

 鉄道ファンとしては、近江鉄道路線の存続問題と同時に、彦根駅に留置された電気機関車たちの行方も気になる。鉄道路線の存続問題は公共性の高い話で、それに比べると趣味性が高くて申し訳ないけれども、近江地区の産業を支えて地域に貢献した機関車たち。かつては東京近郊でも貨物列車をひいていた機関車もある。伊那電気鉄道、国鉄飯田線、西武鉄道と渡り歩いた機関車もある。

 これらの機関車は産業遺産としても価値があると思われるけれども、貨物輸送廃止後は保線列車などの用途しかなく、新型の信号システムが搭載されないなどの事情によって、活躍の機会がない。近江鉄道はこれらの機関車を順次解体する予定で、17年12月16日にお別れイベントを開いた。しかし、2月末現在、まだ解体されず残っている車両もある。

 ファンとしては残してほしいと思う。しかし、近江鉄道としては、自治体の支援を求める手前、役に立たない施設や車両を残すわけにもいかない。輸送費自己負担を条件に無償譲渡する意向もあるようだ(参考記事)。しかし小さな博物館くらいの規模がある。できればそのまま全て残し、滋賀県主導で博物館設置を検討してほしい。滋賀県長浜市の長浜鉄道スクエアと合わせて、鉄道文化の回遊観光路を作れると思う。近江鉄道を公設民営とするなら、この部分は自治体が引き取って保存してくれまいか。

 「1デイスマイルチケット」は、沿線の人々にサービスする目的だと思う。私のような鉄道ファンが格安で乗り回れるという状態は、おこぼれにあずかっているにすぎない。そこで、鉄道ファン向けには、何か付加価値を付けて、2000円か2500円程度の「寄付金付きフリーきっぷ」を設定したらどうか。880円はきっぷ代として、それ以上の差額分は、鉄道存続、または機関車保存費用に向けた寄付金としたらいい。

photo 彦根駅で解体を待つ機関車たち

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