土肥: ティアックがダブルカセットデッキ「W-1200」を発売しました。ワンウェイ(片道走行)方式のカセットメカを2基搭載していて、カセットテープは双方向での録音が可能になっていますよね。でも、そこを自動で対応してくれるオートリバース機能がない。また、倍速ダビングもない。
いま「オートリバース」「倍速ダビング」という言葉を使いましたが、この響きが懐かしい。「いまさらなぜカセットデッキ?」と思ったのですが、時代に合わせてアレンジしていますよね。カセットテープの音声をPC側でデジタル録音することができて(USBを装備)、アーカイブ後はPCやスマートフォンなどでカセットテープの音を聴くことができる。
でも、失礼な話ですが、「それだけ」とも言えるんですよね。カセットテープを利用している人が少なくなっているなかで、なぜティアックはカセットデッキをつくり続けているのか。この質問にはのちほどご回答いただくとして、W-1200はどういったところから開発が進んだのでしょうか?
加藤: 本格的に開発に着手したのは、2017年5月ごろ。1年ほどかけて、W-1200を完成させました。開発の際、オートリバース機能を搭載するかどうかの話になったのですが、結果的に搭載を見送りました。オートリバース機能だけでなく、これもあれもそれも……といった感じで、さまざまな機能を追加すると、ものすごい価格になってしまう。高価格になってしまうと、商業ベースで販売するのが難しくなりますので。
これまでオートリバース機能を使ってきた人にとっては、ちょっと不便を感じられるかもしれません。ですが、今回はないので、「ごめんなさい」と言うしかありません。
長内: ただ、オートリバース機能を搭載しないことによって、いい点もあります。ワンウェイにすることで、「安定性」と「耐久性」が増すんです。ヘッドを反転させる動作がなくなるなど、シンプルな構造になったことで、長く使っていただけるのではないかと。
あと、カセットテープを再生したときに「サー」といったヒスノイズが聞こえますよね。このノイズを低減する「Dolby B NR方式」で録音されたテープを、オリジナルに近い状態で再生するノイズリダクションを搭載しました。なぜこうしたシステムを搭載したのかというと、Dolby B NRに対応したICが生産終了しているから。
土肥: 「オリジナルに近い状態で再生する」ということですが、どうやって再現しているのでしょうか?
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