JR西日本「山陰キャンペーン」で知る、JRグループの課題杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)

» 2018年06月01日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

DCならではの臨時列車が面白い

 DCで訪れる観光客は2つに分類できる。「対象地域を好む人」「列車の旅を好む人」だ。そして、DCの目的も2つ。「対象地域を好む人」には列車の旅の楽しさを知っていただく。「列車の旅を好む人」には対象地域に親しんでいただく。このバランスがあるからこそ、DCは地域とJRグループの相互の利益につながる。

 DCをきっかけとして、JR西日本は前述の「あめつち」「鬼太郎列車」のほかにも魅力的な列車を走らせる。

 7月1日はDCのスタートを記念した「山陰DCオープニング記念号」を運行する。岡山駅午前8時51分発、米子駅午後0時06分着、松江駅午後0時32分着。伯備線、山陰本線経由で、現在の特急「やくも」(岡山〜出雲市)と同じルートの短縮版となる。ただし専用のヘッドマークと側面の行き先表示幕を設置し、車内では伝統芸能の披露などのお楽しみがあるという。主催はJR西日本グループの日本旅行だ。

 8月24〜25日、26〜27日は大阪駅と出雲市駅を結ぶ夜行列車「サロンカー大社」が走る。JR西日本が保有する欧風団体客車「サロンカーなにわ」を使った列車で、24日に往路便、大阪駅発午後10時04分、出雲市駅着午前9時33分。26日に復路便で出雲市駅発午後8時40分、大阪駅着午前6時6分。両方使うと、金曜日の仕事の終わりに大阪を出発し、山陰で1泊して、月曜日の朝に大阪に戻って会社に行ける。夜行列車のメリットを生かした行程だけど、サロンカーなにわは寝台客車ではない。座席だとつらそうだけど、主催の日本旅行がどのような席の売り方をするか興味深い。

 「サロンカー大社」は、かつて金沢・名古屋〜出雲市・大社(廃止)を結んだ急行列車「大社」のリバイバルという。しかし「大社」の名古屋発の列車は米原で北陸本線に入り、敦賀で金沢発の編成を連結。小浜線に入って西舞鶴から宮津線(現・京都丹後鉄道)で豊岡へ。ここから山陰本線に進んで出雲市へ向かった。つまり大阪を経由しなかった。大阪発の「サロンカー大社」がどのようなルートになるか、かなり気になる。

 9月15日には東京駅と出雲市駅を結ぶ寝台特急「サンライズ出雲」の旅行商品向け列車が走る。定期列車の直後、東京駅午後10時21分発、出雲市着午後1時7分着。所要時間は14時間46分にもなる。サンライズ車両をより長く楽しめるというと、鉄道ファン以外には理解されにくいかもしれない。日本旅行、ジェイアール東海ツアーズ、びゅうトラベルサービスのツアーに組み込まれる形で募集されるようだ。

 サンライズ出雲は、夏の臨時列車として一般販売される列車もある。8月11、16、24日は東京駅午後10時21分発、出雲市駅午後1時7分着。8月10、15、23日と9月14日は、出雲市駅午後3時33分発、東京駅午前6時23分着。9月21日は、珍しく京都駅午後10時14分発、出雲市駅午前9時20分着が計画された。

 山陰エリア内の特急も増発される。鳥取〜米子間で特急「大山」が走る。DC期間中の土休日に設定された。ただし8月11、12日は走らない。車両は特急「はまかぜ」に使用している189系気動車だ。これも珍しい設定となった。こちらもみどりの窓口で一般販売される列車だ。

 キャンペーン期間の締めくくりは急行「白兎」の復活運転だ。9月29日に大阪駅午前8時23分発、鳥取駅午後3時58分着。9月30日に鳥取駅午前11時43分発、大阪駅着午後9時16分として運行予定。使用車両は12系客車を使用する。「白兎」は1956(昭和31)年に京都〜松江間を山陰本線経由で運行開始した準急列車で、1961年から急行に格上げされ、大阪〜松江間の編成が追加された。今回復活する「白兎」はこの大阪〜松江間の復活のようで、経由路線は山陽本線、福知山線、山陰本線になると思われる。「急行」「客車」どちらも珍しい。主催は日本旅行だ。

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