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“中国民泊”最大手CEOを直撃 「民泊新法は規制が厳し過ぎる」と力説「民泊2020年問題」勃発(2/3 ページ)

» 2018年06月04日 07時00分 公開
[中西享ITmedia]

ゲストではなくホスト側からのみ手数料を徴収

――エアビーの日本でのリスティング数(提供部屋数)は約6万2000件だが、「自在客」では現在、日本でどのくらいのリスティング数なのか。

張CEO 約1万2000件ほどだ。ただ民泊新法の規制が厳しくなったことで、直近ではこれより少し減っている。ゲストの30〜40%が中国人で、あとはいろいろな国の人が登録している。

――ほかの民泊サイトとの違いは何か。

張CEO 民泊のホストからは手数料(12〜15%)を取るが、ゲストからは手数料はもらわない。ホストとゲストの両方から手数料を徴収するエアビーなどとは異なる方式だ。なぜなら中国の旅行者はホテルの仕組みに慣れているので、「ゲストが手数料を取られる」ことに抵抗感を感じるからだ。

 ホストは、中国人と日本人で半々くらいだと思う。訪日する中国人に翻訳サービスを実施するなど、中国人に特化したサービスをしている。日本だけでなく世界中のホテルも、「自在客

」サイトから簡単に予約できる。当社は日本の民泊のパイオニアで、日本政府と一緒にシェアリングエコノミーを推進している。

phot 自在客のWebサイト

――現在、民泊の予約サイト上には8万件以上の物件があるといわれるが、観光庁によると5月11日現在での民泊新法に基づいた届け出件数はわずか724件にとどまっている。その理由は何だと思うか。

張CEO 民泊新法の方向は正しいが、規制が厳し過ぎる。申請、登録のスピードをもっと速くすべきだ。少なくとも民泊で1日3万〜4万人泊まれるだけの物件数を早く認めて欲しい。

 「自在客」のサイトには6月15日以降の宿泊予約としてすでに5000件ほど入ってきている。今のままでは、これだけの予約を消化するだけの合法民泊の物件を確保できそうにないので、さばけないものはホテルやほかの宿泊施設を斡旋(あっせん)するしかない。

「届け出番号がない民泊物件は載せない」

――民泊新法は非合法の民泊をなくすために施行されるが、どういう方法で新法を守るのか。

張CEO 日本では民泊が法制化されたので、それに従って事業を展開していく。観光庁に住宅宿泊仲介業者として登録申請中だ。また6月15日までに民泊の届け出番号を得られなかった民泊物件については、「自在客」のサイトには非公開とすることにしている。

 また、観光庁やエアビー、そして民泊仲介サイト「ステイジャパン」を運営するベンチャー企業「百戦錬磨」などとともに業界団体である「住宅宿泊仲介業者適正化協会(仮称)」を立ち上げ、ルールを守った民泊を普及させるための研修や情報発信に取り組んでいく。

――日本で展開している民泊業者は旅行会社やコンビニと連携するなどしているが、どこかと連携はしないのか。

張CEO 宿泊予約サイト「じゃらん」とパートナーシップ契約を締結している。「じゃらん」を使っている旅行者の一部を、「自在客」サイトに誘導できればお互いにメリットがある。このほか民泊の代行会社約50社と連携している。部屋のクリーニングなど民泊を管理するための会社とも提携している。

――民泊最大手のエアビーは強力なライバルか。

張CEO 「自在客」サイトは、中国人を中心にアジア客の予約が多いので、エアビーと真正面から競争することはない。特長を生かして民泊ビジネスを展開してきたい。今後は民泊だけでなく、旅館、民宿、ゲストハウスなど多様な宿泊施設を提供する計画だ。

――具体的に旅館をどのように提供するのか。

張CEO 日本の旅館は閉鎖的で、われわれ外資サイトが旅館の予約を取ることはできなかったが、3000もの旅館サイトをサポートしている「手間いらず」と提携することで、旅館の予約が取れるようになった。今後は旅行者の多様な要求を満たすため、旅館だけでなく、民宿やゲストハウスの予約も取れるようにビジネスを拡大していきたい。

――訪日中国人は2017年が735万人で国別では首位だ。18年に入っても1〜4月累計で262万人、前年同期比で約20%増と堅調な伸びを見せている。この傾向は東京五輪後も続くのか。

phot 訪日中国人は全体の36%を占める(日本政府観光局Webサイトより)

張CEO この増加傾向は続くだろう。東京五輪後も減ることはない。なぜなら、中国人は日本に来たがっている。その理由は、飛行機で3時間と近い、アジア人なので同じ文化、伝統がある、自然を含め観光資源が豊か、日本人は親切で友好的、温泉を楽しみたい――などだ。

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