土肥: 伊藤忠が18年ぶりに、社有の独身寮を復活させました。横浜市の日吉駅から徒歩3分くらいのところにあって、広さはオリンピックの競泳用プール(25×50メートル)4面ほど。7階建ての建物に250人ほどが入居していて、来年には全361室が埋まる予定だとか。黒と白を基調にしたデザイナーズマンションのような外観なので、パッと見ただけでは「男子寮」とは思えないですよね。
伊藤忠は2000年まで独身寮を所有していましたが、財務状況が悪化したので、物件を売却していますよね。その後、マンションを借り上げてそこを寮として使ってきたわけですが、なぜこのタイミングで社有の寮を建てることになったのでしょうか?
田村: 当時の寮は横浜市の山手にありました。とても閑静な住宅地にあって、周辺環境もよかったんですよね。部屋は300弱ほどあって、大規模な寮でした。大浴場やランドリールームなどがあって、施設も充実していました。部屋にシャワーやトイレがなかったので、「ちょっと不便かな」と感じていた人もいたかもしれませんが、不満の声はほとんど聞いたことがありませんでした。
ただ、会社の業績がよくない状況が続いていたので、資産を売却することに。その後、東京世田谷区の成城学園前、横浜市の仲町台、川崎市の鷺沼(2棟)に計4棟のマンションを借り上げて、そこを寮として使っていました。ただ、いくつか問題がありまして……。
土肥: 問題? どんなことがあったのでしょうか?
田村: 4棟あったので、社員はバラバラに住んでいたんですよね。Aくんは成城学園前、Bくんは仲町台、Cくんは鷺沼といった感じで。当社の東京本社は港区の青山にありまして、最寄り駅は「外苑前」か「青山一丁目」になる。そうすると、通勤時間に「差」がありまして。成城学園前であれば40〜50分で会社に到着するのですが、仲町台であれば1時間30分ほどかかっていました。
土肥: 鷺沼は大丈夫なのでは? 「鷺沼―外苑前」で調べたところ、30分ほどですよ。
田村: 先ほどお伝えしたとおり、鷺沼には2棟ありました。1棟は駅近にあったのですが、もう1棟は駅から徒歩15分ほどのところにありまして。寮から駅までのルートはアップダウンがきついので、不満を感じている人が多かったのかもしれません。同期と一緒に帰っていても、Dくんは駅近の物件に住んでいたので「お疲れ〜」と言って、建物のなかに入っていく。彼の後姿を見届けたEくんは、その後坂を上ったり下ったりしなければいけませんでした。
土肥: 「同じ会社で働いているのに、不公平じゃないか」と厳しい声があったのでは?
田村: はい。で、どういったことが起きたのか。
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