土肥: よってたかって○○って、小学生の低学年くらいであればいいかもしれませんが、思春期の中学生になると難しいのでは?
義廣: いえ、そうでもないんです。中学生の子どもに、よってたかって誕生日会を開きました。本人からは「そんなのやめてよー。恥ずかしい」といった声があったのですが、当日はどうだったのか。たくさんの大人がやって来て、たくさんの料理が並んでいて、たくさんのプレゼントをもらえる。本人も「それほど悪くないな」と感じたようで、すぐに楽しんでいました。ただ、途中でその場を抜け出して、友だちの家に行っていました。残された大人はどうだったのかというと、ワイワイと会話を楽しんでいたんですよね。
土肥: 話を聞いていると、「子どもため」というのはきっかけであって、「大人のため」でもあるような。参加している大人たちは自分が誰かの役に立てていることに対して、「うれしい」「楽しい」と感じているのでは?
義廣: はい。大人が楽しんでいるので、子どもも楽しむことができていると思うんです。「子どものために」という思いが強ければ、子どもも「それはちょっと……」と感じるかもしれません。子どもを理由に大人は集まって、運動会を観戦したり、誕生日会でワイワイしたり、授業参観に出席したりして、双方にとっていい関係を築くことができればなあと。
土肥: お父さんバンクを始めてみて、想定外のことは起きていませんか?
義廣: お父さんは基本ボランティアでやっているのですが、現場へ行くときに交通費がかかることも。お母さんも払いたい気持ちはあるのですが、経済的に苦しい状況なので支払うことが難しい。そのお父さんは「交通費がほしい」のにもかかわらず、それを声に出すことができなかった。「言わなくてもくれるよね」と思っていたのに、くれなかった。そうするとどんどんストレスがたまっていって、両者の関係がぎくしゃくすることに。そうした関係は健全でないので、事前に「コミュニケーションをきちんととりましょうね」「困ったことがあれば、事務局に相談してくだいね」と言っています。
土肥: これまで大きなトラブルが起きたことは?
義廣: いえ、ないです。「怪しい男性が来たらどうするのか?」「怖い人だったらどうするのか?」といった不安を感じる人もいるかもしれません。ただ、私たちがやっていることは場づくりでしかないので、「その場に行ってみよう」という人だけが集まればいいのかなあと。子育て支援サービスはたくさんあるので、不安を感じている人はそちらを利用すればいいのではないでしょうか。
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