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ユニクロのエアリズムにみる「脱・安かろう悪かろう」の研究宣伝広告と地道な商品開発が奏功(1/4 ページ)

» 2018年07月09日 06時00分 公開
[昆清徳ITmedia]

 一度消費者の頭に刻み付けられたイメージを払拭(ふっしょく)するのは難しい。例えば「ユニクロって安いけど、品質はそこそこでしょ」と考えている読者もまだいるかもしれない。しかし、ユニクロはコツコツと商品の品質と機能性の向上に努め、今では「同じ種類の商品なら、総合的な品質や機能性の面で当社が一番」(広報担当者)と豪語するまでになった。また、同社の商品は他社の競合商品とくらべて、必ずしも安いとはいえなくなってきている。

 2017年9月〜18年2月の国内既存店売上高は前年同期比8.4%増と好調だった。「ヒートテック、ダウン、スウェット、メリノセーターなどのユニクロが強みとする秋冬商品の需要が強かったため」(広報担当者)というのが主要因だが、ヒートテックはその機能性が消費者に支持されており、累計販売数は10億枚を超えるまでになった。

 今回は、ユニクロがいかにして「安かろう、悪かろう」から脱出するようになったのか、その軌跡を同社のヒット商品シリーズである「エアリズム」を中心に紹介したい。

photo メンズのエアリズムシリーズ(出所:ユニクロ公式Webサイト)
photo ウィメンズのエアリズムシリーズ(出所:ユニクロ公式Webサイト)

毎年機能をアップグレード

 2007〜11年にかけて、ユニクロは春夏シーズンを代表する機能性インナーとして「サラファイン」と「シルキードライ」を投入した。衣服内の湿度を抑え、ムシムシする時期でも快適に過ごせると提案したことが受け、累計約5400万枚が売れるヒット商品となった。

 エアリズムは、サラファインとシルキードライを12年に統一したブランドとして誕生したが、その後、毎年のようにさまざまな機能を付け加えていった。例えば、通気性を1.8倍にしたり、消臭機能を追加したり、9%軽量化したりといった具合だ。新機能が追加されることで別の機能がなくなることはなく、毎年、どんどん機能的に強化されていくとイメージすればよい。

 エアリズムの機能は「吸汗速乾(汗をかいてもすぐ乾く)」「接触冷感(着た瞬間にひんやりとする着心地)」「吸湿・放湿(呼吸する繊維が衣服内を除湿)」など全部で9つあり、数値などで評価できるという(詳細は非公表)。同社広報担当者は「他社製品のなかには、1つの機能だけをフォーカスして『No1』とアピールしているところがありますが、当社のエアリズムはトータルで圧倒的に強い」と胸を張る。

photo エアリズムの機能性をアピール(出所:ユニクロ公式Webサイト)
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