1946年4月、彼らが米政府に提出した「日本陸海軍の情報部について」というレポートには、日本の敗因が分析されている。それを陸軍参謀だった堀栄三氏が『大本営参謀の情報戦記』(文藝春秋)のなかで以下のように要約している。
(1)国力判断の誤り
(2)制空権の喪失
(3)組織の不統一
(4)作戦第一、情報軽視
(5)精神主義の誇張
興味のある方はぜひ同書を読んでいただきたいが、これらの要因の根っこにあるのは、日本の指導者層が「神がかり的な日本不滅論を繰り返し声明」したことが大きい、と米軍は見ていた。
神国・日本は絶対に負けない、という思い込みが「連合国の生産力、士気、弱点に関する見積もりを不当に過小評価」をさせて、「陸海軍間の円滑な連絡」をさまたげた。つまり、傲慢さによって「情報に盲目になってしまった」というのである。
こういう話をすると、「それはホラ、当時は軍国主義だったから」みたいに、自分たちとまったく価値観が異なる遠い異国のことのように語る人が多いが、たかが70年ぽっちで社会がガラリと変わるわけがない。事実、陸海軍のような弱点をもつ組織は、現代日本にも山ほど溢れている。この「弱点」は現代日本でもバリバリ健在である。
報道対策アドバイザーという仕事柄、不正や不祥事が発生した組織のトップとお話をさせていただくこともあるのだが、そこで気付くのは、危機のレベルや世論の反発を見誤っている方が圧倒的に多いということだ。立派な経歴をもち頭脳明晰(めいせき)なリーダーにもかかわらず、有事に直面した途端、情報に盲目となっているのだ。
「しばらく叩かれていればそのうち忘れられるだろ」
「これくらいのことで謝罪会見など開く必要はない」
「法的にはなんの問題もない」
こういうことをしれっと言ってのけてしまう人たちと対話を重ねていると、その根底に「神がかり的な不滅論」があるとしか思えない。
「会社の存続に関わる危機だ」と口では騒ぎながらも、ほとんどのリーダー、組織人たちは内心、「なんやかんや言っても、これくらいのトラブルでうちが潰れるわけがないだろ」と高をくくっている。このような「傲慢さ」が、日本大学のような謝罪会見を招き、日産や三菱自動車のように同じ過ちを繰り返す不正体質につながっているのは明らかだ。
「そんなのはお前の妄想だ!」というツッコミが寄せられそうだが、米軍が指摘した「弱点」を我々が克服できていないことの動かぬ証拠こそが、「クールジャパン」である。
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