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“リーマンショック解雇”を機にフレンチの道へ 元外資金融マンが描く「第3の人生」連載 熱きシニアたちの「転機」(3/5 ページ)

» 2018年07月19日 07時00分 公開
[猪瀬聖ITmedia]

好調なスタート切るも5カ月後には閑古鳥

 「自信はあった。ビジネスマン時代に培ったマーケティングの知識や経験を生かせば、絶対成功すると確信していたし、3年ごとに1店舗ずつ増やし10年で3店舗を経営しようなど、いろいろなビジネスモデルも考えていた。しかし、結果的に全て自分の誤算だった」と両角さんは振り返る。最初の4カ月こそ知り合いが多く来てくれるなどして好調なスタートを切ったが、そのうち閑古鳥が鳴き始めた。

 店を畳もうと考えたこともある。「ぶっちゃけ、初期投資額の4000万円を損切りをすればいいだけ。金融業界に戻れば、間違いなく飲食業よりは稼げるし、損失なんて数年で取り戻せると思った」

phot ミシュランガイドに載ったからといって客が押し寄せるわけではない

 しかし、結局、レストランを続ける道を選んだ。自分がやりたくて選んだ道だからだ。

 それからは、今も続く試行錯誤、苦労の連続。例えば、当初は厨房2人、ホール2人の4人体制だったが、売り上げが落ちたため、厨房はシェフ1人にし、ホールも昼間は両角さんだけで応対することにした。一時は1800本あったワインの在庫も約半分に圧縮。

 一方、新規の顧客やリピーターを増やそうと、メニューやワインリストを工夫して客単価を引き下げたり、浴衣を着て食事を楽しむ「浴衣ナイト」や「出逢いナイト」と銘打った婚活パーティーなどさまざまなイベントを企画したりした。客の少ない週末の売り上げを少しでも伸ばそうと、この7月からは毎月、テーマを決めたワイン会を開き始めた。

phot カウンターには数々のワインとグラスが並ぶ

 当然、しわ寄せはどこかに来る。1人しかいないシェフが一昨年、交通事故に遭い入院、臨時休業を余議なくされた。両角さん自身も、休みを減らしたり、従業員にやらせていた開店準備などの業務を自分で全てやるようにしたりした。

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