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» 2018年08月07日 08時00分 公開

スピン経済の歩き方:熱中症の被害者が出ても、夏の甲子園が絶対になくならない事情 (5/7)

[窪田順生,ITmedia]

「シゴキ=必要悪」という誤った認識

 これが大企業にパワハラが発生するメカニズムだ。例えば、電通の新人女性社員が過労自殺に追い込まれた事件があったが、彼女の上司たちは決して「いじめてやろう」などと思っていなかったはずだ。かつて自分たちが上司から言われたこと、強いられたことを「再現」したに過ぎないのである。

 なぜそんなバカなことをするのかというと、「運動部しごき自慢おじさん」だからだ。中高の運動部、大学の体育会を経て社会人になった一部の大人たちの頭というのは、本人もなかなか気付いていないが、「シゴキ=必要悪」という思想にとらわれてしまっているのだ。

 「あの辛い日々があったから、今のオレがある。こいつも自分のように困難を乗り越えて、大きく成長してほしい」

 そんな歪(ひず)んだ親心から、自分がかつて受けた壮絶なパワハラを後輩や部下に対しても忠実に「再現」してしまう。かつて虐待を受けた子どもが親になって、我が子に暴力を振るうように。

企業のパワハラと夏の甲子園の関係

 この企業内の「ハラスメントの無限ループ」の構造とまったく同じことをやっている世界がもうひとつある。そう、「夏の甲子園」を頂点とする「高校野球」である。

 理不尽なシゴキを受けた子どもが大人になって、監督やコーチになれば当然、親心から自分が受けてきたハラスメントを子どもたちに「再現」する。子どもたちも、大人たちからこの過酷なハラスメントを乗り越えれば、素晴らしい栄光が待っていると煽(あお)られるので、自分たちも進んで過酷な状況へと追い込んでいく。

 熱中症でバタバタ倒れて、時に死人もでるが、誰も狂気沙汰だとは思わない。ちまたにあふれる「運動部しごき自慢おじさん」が「強くなるにはある程度のシゴキが必要だ」とワケ知り顔で語り、『朝日新聞』のようなメディアも「それが青春だ」と触れ回るからだ。

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