最大50%還元! JR西日本「ICOCAポイント」、“大胆策”の理由杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)

» 2018年08月17日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

「昼間特割きっぷ」廃止、誰にとって衝撃か

photo 金券ショップが設置している回数券バラ売り自販機。JR西日本の主要駅のそばにある。関東でも一部の金券ショップや「運賃が高い」と話題の北総鉄道沿線で見かける(画像は一部加工)

 ところが、昼間特割きっぷの廃止が、利用頻度の低い乗客からも値上げと解釈されかねない事情がある。実は、JR西日本の高割引率の昼間特割きっぷは、金券ショップにおけるバラ売りが横行している。バラ売り専門の自動券売機もあって、駅のそばでジュースの販売機と並んでいる場合もある。だから実質的に6回縛りはないのも同然だ。

 昼間特割きっぷの廃止で衝撃を受ける人は、バラ売りの利用者と、バラ売りする金券業者だ。バラ売りは金券ショップ業者が1枚当たり数十円の利益を乗せている。350円のきっぷなら400円前後。それでも正規運賃より100円以上安い。金券ショップにとっては10%の利益。単価は安いけれども、商品券よりも高い利益率。薄利多売の見本みたいな商品である。

 JR西日本にとって、この状況はよろしくない。そもそも昼間特割きっぷが設定された区間の中には、電車特定区間もある。国鉄時代、競合する私鉄に対抗して、普通乗車券の運賃を下げた区間だ。JR西日本もこの運賃を継承している。そこに割引きっぷを追加設定するために、ボリュームディスカウント方式にした。1人、あるいは1グループで6回乗ってもらうという前提で売っている。

 単発で利用する乗客から560円もらえる状況にもかかわらず、350円しかもらえない。しかも、本来受け取るべき売り上げの一部は金券業者に吸い取られている。この状況は解決すべき問題だった。その解決策がICOCAポイントの時間帯指定ポイントだ。首都圏の鉄道のポイント還元よりも、ずっと深刻な理由がJR西日本にはあった。

photo 京都〜大阪間の運賃比較。参考値として金券ショップの相場価格も並べた。この区間は9枚分の料金で11枚つづりの回数券が販売されているため、ICOCA利用回数ポイントよりも回数券の方が安い。ICOCA時間帯指定ポイントは昼間特割きっぷや金券ショップバラ売りほど安くはならない。しかし、4回乗れば金券ショップの回数券1回分に並び、6回乗れば金券ショップの昼間特割きっぷ1回分に近づく。「金券ショップキラー」といえそうだ

【更新:2018年8月17日17時30分 画像を差し替えました】

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