最大50%還元! JR西日本「ICOCAポイント」、“大胆策”の理由杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)

» 2018年08月17日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

回数券とポイント還元、どちらがお得?

 利用者から見て、ICOCAポイントの獲得方法は3種類ある。鉄道利用による「利用回数ポイント」と「時間帯指定ポイント」、買い物の決済にICOCAを使う「電子マネーポイント」だ。

photo ICOCAポイントの獲得方法は3つ(出典:JR西日本報道資料

 「利用回数ポイント」は、従来の紙の回数券に準じたサービスだ。同一運賃区間の1カ月間の利用回数が11回以上になった場合、11回目から毎度、その区間の運賃の10%が付与される。回数券は利用する区間(駅間)が指定されるけれども、ICOCAポイントは同一料金であれば、違う区間でも回数を合算してカウントされる。回数券は200キロ以内の区間で発行され、ICOCAも利用距離は200キロの制限がある。

 しかし、ICOCAの200キロ制限には特例区間があり、「大阪近郊区間内相互発着の区間」「特急くろしお号の停車駅相互間」「大阪近郊区間内の駅と特急くろしお号停車駅相互間」「特急やくも号の停車駅相互間」は利用できる。例えば、大阪近郊区間の三ノ宮駅から新大阪駅経由で特急くろしおに乗り和歌山県の新宮駅へ向かうルートは311.2キロで回数券の制限距離を超える。ただしICOCAは特例で使用できるため、利用回数ポイントを獲得できる。乗車券は5400円に対し、同月内で11回目の利用から540ポイントだ。「特急やくも」の岡山駅〜出雲市駅間は220.7キロ。乗車券は3670円。11回目から367ポイントを獲得できる。

【追記:2018年8月18日23時40分 初出時、「ICOCAは200キロ以上の区間で利用回数ポイントを獲得できる」と記述しましたが、ICOCAは原則として200キロ以上の区間では利用できません。ただし特例区間があります。該当箇所を修正しました】

 回数券が使える200キロ圏内では、回数券とICOCAポイントのどちらが得だろうか。回数券は11枚つづりで10回分の値段になる。ICOCAの11回分の料金と比較しよう。

 JR西日本の普通乗車券で7〜10キロ区間の運賃は200円だ。回数券では10回分、2000円の運賃を前払いすると11回乗車できる。1回当たりの運賃は約181.8円だ。ICOCAポイントの場合は、まずは10回を正規運賃で乗ると、2000円。11回目は10%のポイントを獲得できるため、20円分が還元される。2180円で乗れたと考えれば、1回当たりの運賃は約198.2円だ。

 ポイント還元と割引は厳密には違う意味だけれども、単純に比べると回数券のほうが得だ。ただし、前述のようにJR西日本の回数券は駅間が固定されている。阪急電鉄など、料金単位の回数券なら、同じ料金の他の区間でも使えるけれど、JR西日本は駅が指定される。そして有効期間の3カ月で使い切る必要がある。利用頻度が低い区間で回数券を買い、うっかり有効期間が切れてしまう場合もあるだろう。

 私は営業職時代に回数券を買ったけれど、帰路は別の経路に立ち寄るなどして使い切れなかった。そういう人は、区間に縛られないICOCAポイントのほうに利点がある。ICOCAポイントがスタートしても回数券制度はなくならないので、回数券を賢く使おう。

photo 回数券と「ICOCA利用回数ポイント」の比較

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