徳島市の遠藤市長が委託した弁護士、公認会計士などから作る「阿波おどり事業特別会計の累積赤字の解消策等に関する調査団」の報告書を読むと、観光協会は昭和50年代から累積赤字を積み重ねてきたことが分かる。
徳島県と徳島市から補助金の交付を受けて「公益目的事業」として阿波おどり事業を進めてきたが、「収支均衡を考慮した議論や収支改善の方策や累積赤字の解消に向けた議論がなされた形跡がほとんど認められない」という。つまり、40年近く「税金で食わせてもらうのが当たり前」の発想でやってきたのである。
なぜこうなってしまうのかというと、観光協会の面々をみれば一目瞭然だ。
「行政、阿波おどり関係団体、宿泊業界団体、交通事業者、マスコミ、金融機関、商業関係団体の役員等」(報告書より)――。そう、阿波おどりという見学スポットにぶら下がって甘い汁を吸い続けられる既得権益者の皆さんである。
報告書ではこれらの人々に「当事者意識の希薄さ」が見られると指摘していたが、当事者意識を持てというほうが無理な話だ。彼らからすれば、累積赤字の解消や収支改善などどうでもいい。大切なのは、阿波おどりという「客寄せパンダ」にいかにうまくぶら下がって、自分たちの商いをうまく回すことのほうだからだ。
いくら何でも観光協会を悪く言い過ぎだと不快になる方もいらっしゃるかもしれないが、彼らが骨の髄まで「見学型観光」に毒されてしまっていたことは、過去の動きからも分かる。
本来、40年近く赤字続きのイベント運営なのだから、収支構造を抜本的に見直すような改革が必要なのだが、実行委員会はその逆をする。03年まで見物できる桟敷席は全席自由席だったが、この5分の3を高価格帯の指定席へと変更。それだけでは単に「値上げ」になってしまうので、「二部入れ替え制」を開始したのだ。
「これで、収容人員が約45%アップ、二千四百四十万円の増収が見込まれ、四億円に膨らんだ累積赤字は十年で解消できる試算」(読売新聞 2003年12月23日)
客数を増やすための努力ではなく、1人当たりの単価と収容人数の調整で乗り切ろうとする。ゴールデンウィークや夏休みという大型休暇に集中して、客をさばくことでもうけを得てきた「昭和の見物型観光」の典型的な考え方と言えよう。
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