騒動がなくても阿波踊りの観光客は減少した、根深くて単純な理由スピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2018年08月21日 08時31分 公開
[窪田順生ITmedia]

「昭和の見学型観光」から脱却する方法

 では、どうすれば阿波おどりは客足を増やして、赤字を解消することができるのか。

 国内の見物人が減少している以上、外国人観光客をこれまで以上に取り込まなくていけないのは言うまでもないが、そこでポイントとなるのが昨今言われている「体験型観光」だ。

 皆さんも国内や海外を旅行したとき、ショッピングや食事だけではなく、ツアーやアクティビティに参加するだろう。その場所でしかできないさまざまな体験をしたいと考えるはずだ。

 それは踊りのイベントならばなおさらだ。

 もう随分前だが、筆者はリオのカーニバルに参加したことがある。もちろん、ツアーとしてお金を払ってでの参加だが、世界中からさまざまな国の人が、あの熱狂を体験しようと参加していた。日本が誇る阿波おどりももっとこの方向を打ち出してもいいのではないか。

 もちろん、今も「にわか連」という一般参加の窓口はある。徳島市役所市民広場か元町おどり広場に集合すれば、観光客であっても演舞場で踊ることができるのだ。

 ただ、これは全て「無料」なのだ。

 先着250人に記念のハッピなどを貸し出ししていてそこで3000円取っているが、クリーニング代の500円だけを取っていて返却時に2500円を返すので、運営側にはお金は入らない。赤字続きのイベントにしては、随分と気前がよすぎないか。

 観光客のことを考えて素晴らしいじゃないか。日本の伝統芸能に触れてもらうのに金を取るなんてできるか。そんな意見があるかもしれないが、無料というのは裏を返せば、阿波おどりというものには、たいした価値がないと言ってしまっていることに等しい。

 阿波おどりという日本の誇る伝統芸能を、地元の人々と同じような衣装と、同じようなちゃんと指導を受けて、同じような舞台で踊ることができれば、それは一生の思い出になる。そのような価値に対して、お金を払う観光客は少なくないはずだ。

 見物人はただ見るだけなので、できるだけタダがいい。だが、その土地の文化や伝統を実際に体験してみたい観光客は、その価値があるものにはちゃんとお金を払う。今の阿波おどりは残念ながら、見物人しか相手にしない。一般参加者も見物人に対する「お試しの無料サービス」だ。

 お金を払ってでもリオのカーニバルに参加したい人が世界にはたくさんいるのに、それに負けていない阿波おどりの一般参加は、「スーパーの試食」と同じような扱いなのだ。

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