ただ、ここで誤解をしてほしくないのは、阿波おどりそのものに問題があるというわけではないということだ。海外にも広く知れ渡るこの伝統芸能に、観光資源としての大きなポテンシャルがあることは疑いようがない。
それをよく示しているのが、阿波おどり会館の好調さだ。ここは年間を通して、阿波おどりを体験できる施設で、近年は外国人観光客も増加。03年には年間54万人だったが着々と客足を伸ばして、15年には61万人にもなっている。
つまり、阿波おどりに触れたい、知りたいという人たちは確実にいるし、その魅力は着々と外国人観光客にも広まっているにもかかわらず、お盆の時期に行われる阿波おどりは赤字続きで、主催者らが見物人や利権の奪い合いをしなくてはいけない、という奇妙な現象が起きているのだ。
なぜ阿波おどりのポテンシャルを、イベントになると生かすことができないかというと、いまだ「昭和の見物型観光」にゴリゴリに執着しているからだ。
繰り返しになるが、これは「祭り」や「神社仏閣」「史跡名勝」という「見学スポット」に一度ぶら下がることができれば、後は既得権益者となって甘い汁が吸い続けられるビジネスモデルだ。
「見学スポット」からいかに近くに店を構えるかとか、その名前を使った「ほにゃらら饅頭」みたいな商品やサービスができるかのがキモという、「海の家」にも通じる「便乗型ビジネス」と言ってもいい。
このように観光資源の周囲が潤う「見物型観光」のもとでは、観光資源そのものの価値を上げていくことは難しい。「客寄せパンダ」として存在してくれればいいだけなので極端な話、中身が腐って崩れそうであっても、「見物型観光」の恩恵を受ける人たちにはなんの問題もないからだ。
多くの観光客でにぎわっている国宝の寺や神社がボロボロで壊れたところも放置していたり、あるいは誰もが知るような風光明媚なスポットが全く整備されず荒れ放題になっていたり、というのはこれが理由だが、実はこれは阿波おどりにも当てはまる。
NHK「夏休み子ども科学電話相談」の仕掛人に、舞台裏を聞いてきた
6畳弱の狭い物件に、住みたい人が殺到している理由
剛力彩芽が叩かれる背景に、日本人の国民性
登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
「一蘭」にハマった外国人観光客は、なぜオーダー用紙を持って帰るのか
なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか
大東建託が「ブラック企業」と呼ばれそうな、これだけの理由
電通や東芝といった大企業が、「軍隊化」してしまうワケ
なぜレオパレス21の問題は、旧陸軍の戦車とそっくりなのかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング