任天堂・宮本茂氏が語った「スマホ対応への苦悩」「マリオラン」なぜ1200円?(2/4 ページ)

» 2018年08月22日 19時39分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

「マリオラン」のリリースはなぜ遅くなったのか

 オリジナルのスマホゲームの提供が遅れた理由について、宮本氏は「任天堂は“プラットフォームメーカー”。自社でゲーム機とソフトの両方を生み出し、対応するソフトを他社にも作ってもらうビジネスを行ってきた。他社のハード向け商品を作ったことはなかった」と説明。他社が生み出したスマホにゲームアプリのみを納入することに抵抗があったと説明した。

 「私は本来、電話をする目的で携帯電話を所持していた。『ゲームで電池を使い切って、電話に出れなかったら元も子もない』との考えもあり、スマホゲームに積極的になれなかった」

photo 講演での宮本氏

 だが、時がたつにつれて「スマホの存在を無視できなくなった」という宮本氏は、「1人でも多くの人に遊んでもらうため、覚悟して(アプリ開発を)行った」と振り返る。

 開発テーマは「シンプルで簡単」。適度なハードルを設けてクリア時の満足度を担保しつつも、「気軽にチャレンジし、失敗しても『次は本気を出す!』とラフに遊べるものにしたかった」という。親子で遊べるアプリにしたいとの思いもあったという。

 こうした経緯で、ボタンを押さなくても「マリオが自動で走り続け、画面をタップしてジャンプさせる」という同タイトルならではの操作感が生まれたのだ。

「マリオラン」はなぜ1200円だったのか

 また、「スーパーマリオラン」を開発していた当時、世間では、スマホゲームでレアなアイテムを得るために莫大な金額を“ガチャ”につぎ込む重課金ユーザーが増えていることが問題視され始めていた。

 この問題を踏まえ、宮本氏らは同タイトルの課金方法を徹底的に議論。親子で安心して遊んでもらうことなどを目的に、「(お金を払った分だけキャラが強くなるなど)パラメータやデータに課金額が影響するのはやめる。重課金を目的としたビジネスモデルは使わない」と決断したという。

 「各ステージを300円くらいで売るプランもあったが、シークエンス(ステージ間のストーリーのつながり)が難しくなるため、採用しなかった」

photo 無料ステージをクリア後に表示されるメッセージ

 その結果、任天堂が選択したのは「買い切り型」のビジネスモデル。一部のステージのみ無料で開放し、続きを遊びたいユーザーに1200円の支払いを課すが、それ以降の追加料金は一切発生せず、全ての要素を提供する――という仕組みだ。

 リリース当初、ネット上の意見は「アプリ代に1200円は高い」「いや、良心的な課金システムだ」と賛否両論に分かれたが、配信開始から4日間で全世界で4000万ダウンロードを突破するなど、好調な滑り出しを見せた。

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