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» 2018年08月24日 07時30分 公開

「役所の非難」では何も始まらない:「障害者雇用の水増し」で露呈する“法定雇用率制度の限界” (4/5)

[田中圭太郎,ITmedia]

法定雇用率の考え方を変えるべき

――障害者雇用率制度の問題点を解決するには、どのような方法が考えられますか。

 これまで触れてきたように、根拠も目的もよく分からない法定雇用率の計算方法と考え方を変えることが必要だ。障害者が労働市場で差別なく扱われるのであれば、働く意思を持っている障害者の割合は、日本全体の数字と同じだと考えるのが適切ではないか。障害者の労働力人口を226万人と推定して厚労省の算式に当てはめると、4.4%という法定雇用率が導き出される。

――現在の法定雇用率の倍になりますね。

 この数値を政策目標にして、企業の障害者雇用率を毎年チェックする。しかし、未達成の企業名は公表しない方がいい。弊害の方が大きくなるからだ。急に達成させるのではなく、みんなが目指すべき目標にすれば、日本の企業は真面目なので、着実に取り組むと考えている。

――そうはいっても、4.4%は高すぎませんか。

 例えば2.2%までは直接雇用によって達成することを義務化して、2.2%から4.4%までは、「みなし雇用」を活用してもいい。みなし雇用とは、社会福祉法人などが運営するA型事業所に企業が業務を発注すれば、その発注量に応じて企業の障害者雇用率にカウントできるというものだ。本業で2.2%を目指して、単純作業をみなし雇用にすることで、障害者にとってはいまより仕事も増え、プラスに働くだろう。

phot 「みなし雇用」の仕組み(中島教授提供)。業務ごとに仕事を切り出し、それぞれを専門的に行うA型事業所に発注する。その発注量に応じて雇用率にカウントしてもよいとするのが「みなし雇用」の考え方だ

働き方改革から障害者雇用が生まれる

――どうすれば本業から障害者雇用を生み出すことができるのでしょうか。

 いま、日本では働き方改革に注目が集まっている。障害者雇用はそのための手段として有効だと考えている。具体的に言えば、働き方を個人に合わせることだ。なぜ機能不全を抱える人たちが「障害者」になってしまうのかというと、その人のできないことの方に目が行ってしまうからだ。だとすれば、できることと仕事を結び付ければ、その人は「障害者」にはならない。「合理的配慮」によって、それは可能になる。

――その考え方は、障害者以外にも当てはまりますね。

 出産の時に休まなければならない女性も、その一定期間は仕事上の不都合が生じる。子育てのために長時間働けないのも、働く視点から見れば、ある意味では「障害」になる。しかし、その不都合を働くことの障害にしなければ、別に問題はない。個人に配慮した働き方を企業が用意すればいいのだ。障害者や女性、うつなどの病気を抱えている人に適した働き方は、会社全体にとっての望ましい働き方につながる。

――後押しするには、何が必要でしょうか。

 少なくとも法定雇用率を上げ、企業に過度のプレッシャーを与えていく現行のやり方は間違っているのではないか。単に労働時間を短くするだけでも、恐らくどこかでしわ寄せがくる。どうすればもっと効率的な働き方ができるのかを、われわれがじっくり考えることで、障害者の雇用も変わっていくだろう。

 働き方改革を進めることで結果的に企業の生産性を上げ、労働時間も短くし、障害がある人でも戦力にできることが、全部セットで可能になるはずだ。障害者雇用の課題はハードウェア型ではなく、ソフトウェア型の配慮で解決できると思っている。

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