以上が中島教授へのインタビュー内容だ。
中央省庁や地方自治体が障害者雇用率を水増ししていたことは、確かに大きな問題だ。この問題は報道によって明らかになり、8月24日現在、厚生労働省は何も正式に発表していない。厚生労働省の担当者は筆者の問い合わせに対して、「各省庁の状況を現在精査している。できるだけ早くまとめて公表したいと考えているが、まだめどは立っていない」と話している。
各省庁で水増しの実態を調べ、関わった人事担当者を処分するといった対応だけでは、何の解決にもならない。まず水増しの実態を明らかにするとともに、役所で働く障害者がどのような仕事をしているのか、現在どれだけ仕事があるのかまで、徹底的に調査する必要があるだろう。
その一方で、中島教授の指摘から考えると、今回の問題は、長年の障害者雇用政策のひずみによってもたらされたものといえる。この機会に、数字だけを追い求めてきた法定雇用率の在り方も含め、政策を根本から検討し直すべきではないだろうか。
働き方改革が叫ばれる中で、障害者の働き方改革を置き去りにすべきではない。障害者雇用率の水増し問題は、いま日本全体の「働き方」を改革する必要性を示している。
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。「スポーツ報知大相撲ジャーナル」で相撲記事も担当。HPはhttp://tanakakeitaro.link/
金魚すくいにテレビゲームが「仕事」? “虚業”化した障害者雇用をどう変える
松屋フーズ、ヤマト、KDDI、第一生命 先進企業に探る「障がい者雇用」の本質
「Amazonとは違う世界を」 古書店に眠る本を“検索”で蘇らせた元リコー社員
二宮和也主演「ブラックペアン」で話題の手術支援ロボット 直腸がん手術「第一人者」に聞く
56歳で早期退職 元大手ITエンジニアが「介護タクシー」続けるワケ
お金なし、知名度なし、人気生物なし 三重苦の弱小水族館に大行列ができるワケ
「同一労働同一賃金」とは? 人事担当者必見の「働き方改革」用語解説Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング