このようなスポ根危機管理に陥っているリーダーを観察していくと、往々にして以下のような思想というか、信念にとらわれていることが多い。
(1)人より努力をした人間は、人より素晴らしい栄冠をつかむ(努力至上主義)
(2)どんなに辛いことであっても、がんばればきっと乗り越えられる(根性至上主義)
(3)自分のやっていることは間違っていない、とにかく自分を信じる(自分至上主義)
いいリーダーじゃないかと思う方も多いかもしれないが、ただ危機管理という場面ではこういう思想の方はかなり危うい。被害を拡大させるどころか、二次被害、三次被害を招きかねないからだ。
では、具体的に何が問題なのか、塚原夫妻や谷岡学長のこれまでの言動を例にして、1つずつ説明していこう。ワイドショーのコメンテーターや専門家の皆さんが、お三方を批判しているポイントは、ざっとまとめると以下のようになる。
(A)協会幹部の立場を利用して「私物化」している
(B)「選手の意志」を無視して、自分の考えを高圧的に押し付ける
(C)反論をすればするほど、被害者を傷つける「パワハラ」になっている
ご本人たちからすれば、いわれのない誹謗(ひぼう)中傷かもしれないが、筆者から言わせていただくと、これらはすべてスポ根危機管理がもたらした弊害である。
(A)から順に説明していこう。
なぜ彼らに私物化批判が起きるのかというと、塚原夫妻も谷岡氏も、競技団体幹部という権威的な立場についているのにもかかわらず、「名門」とされるチームも率いている、という「2つの顔」を使い分けていることが大きい。
どんなに「体操界のため」「レスリング界のため」をうたっても、「自分のチームのためでしょ」と見られてしまう。協会幹部というポジションをフル活用して、自分や仲間へ利益誘導をしているのではないかという疑いを持たれてしまうのだ。
このような立場に就く人は通常、周囲に誤解を与えぬよう、言動に細心の注意を払う。だが、塚原夫妻や谷岡氏のこれまでの自由な言動からは、そのような配慮があったとは感じられない。
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