2.年次有給休暇の強制付与
(1)年次有給休暇の取得義務付け
改正労働基準法37条7項及び8項により、使用者は(1)年次有給休暇の付与日数が10日以上ある労働者に、(2)年5日の年休について(3)年休付与の基準日から1年以内に時季を指定する義務を負うことになりました。
年休の残日数のうち5日を超える部分については、労使協定により計画的付与(事業場単位の一斉付与・グループ別の交代制付与・計画表による個人別付与の3パターンあり)ができ、計画的付与を実施した場合は上記の5日から差し引くことができます。
(2)時季指定の方法
上記の制度における時季指定の方法については、今後の省令や行政の説明をみて確認することになりますが、現状においても、年休の消化率を確認しておく必要があります。非正規社員でも年休は発生するので(パートタイム労働者の場合は比例付与)、非正規社員も含めて年休5日を付与した場合の人員体制(シフト)や人件費のシミュレーションをしておく必要があるからです。
3.施行日に向けた対応
上記「1.時間外労働の上限規制」「2.年次有給休暇の強制付与」のように、今回の法改正により労働時間および年次有給休暇について大きな改正がありました。労働基準法違反には罰則もありますので、企業として対応は必須です。だからといって、慌てて書式集や法改正の資料を集めるのは得策ではありません。
まずは自社における労働時間(時間外労働・休日労働を含む)と、年次有給休暇に関する(1)〜(4)のような現状確認が必要です。
(1)労働時間の把握・記録方法はどのように行われているか?
(2)現状の36協定の内容や時間外労働・休日労働時間はどうなっているか?
(3)振替休日や代休はどのように管理されているか?
(4)年次有給休暇の付与方法と消化状況はどうなっているか?
これらの管理がきちんとなされていないと、時間外労働などを計算・管理するシステムや36協定の特別条項を整備しても、「形だけの制度」になってしまいます。特に、今後の労働時間の管理では、2カ月から6カ月の平均残業時間を常時カウントできる体制が必要になるのです。勤務月だけでなく、それ以前の労働時間も把握し、法律違反が発生しそうな場合は事前にアラートが出るシステムにしておく必要があります。
高仲幸雄(たかなか ゆきお)
中山・男澤法律事務所パートナー弁護士
早稲田大学法学部卒業。2003年弁護士登録。現中山・男澤法律事務所所属。国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師。著者に『改訂版 有期労働契約 締結·更新·雇止めの実務と就業規則』(日本法令)、『異動・出向・組織再編 適正な対応と実務』(労務行政)など著書多数。
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