「働き方改革」の用語解説
働き方改革関連法が可決・成立し、企業にも具体的な対応が求められます。企業の人事担当者が押さえておくべき「働き方改革」のキーワードをピックアップ。労働問題を扱う新進気鋭の弁護士が、用語の概念と企業が取るべき具体的な対策方法を解説します。今回は「特定高度専門職・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」を取り上げます。
今回は「特定高度専門職・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」を取り上げます。
国民から「長時間労働を助長し、過労死が増えるのでは」「対象業務の拡大や年収要件の引き下げが行われるのでは」との懸念が噴出した高プロ(写真提供:ゲッティイメージズ)
1.高度プロフェッショナル制度の創設
時間外労働・休日労働・深夜労働をした場合、労働基準法37条では割増賃金の支払いを義務付けています。この点、同法41条2号の管理監督者においては時間外労働および休日労働の割増賃金の対象外となっている一方、深夜労働の割増賃金の支払いは必要です。
また、裁量労働制(専門業務型・企画業務型)では、一定の労働時間と「みなす」ことができますが、休日および深夜の割増賃金の支払いは必要ですし、みなされた労働時間で時間外労働が発生している場合には、時間外分の割増賃金が発生します。
今回の労働基準法改正では、時間外・休日・深夜の割増賃金の支払い対象から除外される新たな制度が設けられました(施行日は2019年4月1日)。これが高度プロフェッショナル制度(特定高度専門業務・成果型労働制)です(同法41条の2)。「定額働かせ放題」「残業代ゼロ制度」などと批判する声もありますが、同制度は高い職業能力と年収(賃金)を有していることを前提としている上、導入に当たっての要件も厳しいものになっており、改正後に高度プロフェッショナル制度の適用対象者がどの程度になるのかは未知数です。
2.対象業務・対象労働者
(1)高度専門職
対象業務は「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務」です(労基法41条の2第1項1号)。具体的には、今後制定される労働基準法施行規則で明記される予定です。
(2)対象労働者
対象労働者は、以下の要件を満たす者を労使委員会で決議します(同法41条の2第1項2号)。
- 使用者との書面等による合意に基づき職務範囲が明確に定められていること
- 年収(見込み)が労働基準法施行規則で定められる額以上であること
また、年少者(満18歳に満たない者)は同制度の対象者にはなれません(同法60条)。
(3)希望者が対象
上記(1)(2)の要件を満たしても、対象労働者の同意が必要です(同意は撤回も可能)。同意しなかったとしても、解雇その他の不利益な取り扱いはできず、この点は労使委員会で決議されます。
3.労使委員会の決議
労使委員会では労働基準法41条の2条1項各号にある以下の事項について5分の4以上の多数による決議が必要です。
1号:対象業務
2号:対象労働者の範囲
3号:対象者の健康管理時間(事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間
の合計時間)を使用者が把握する措置
4号〜6号:健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置
7号:同意の撤回手続き
8号:苦情処理措置の実施
9号:対象労働者の不同意に対する不利益取扱いの禁止
10号:その他(決議の有効期間等)
なお、高度プロフェッショナル制度における労使委員会の要件は企画業務型裁量労働制の規定を準用しています(労働基準法41条の2第3項、同法38条の4第2項など)。
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