お店のミライ

“変態セブン”が生まれた背景に、地獄のドミナント戦略スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2018年09月25日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

コンビニのフランチャイズシステムのひずみ

 分かりやすいのが、大阪府のファミリーマート2店舗かけ持ちで、1日15時間労働をして亡くなった男性の遺族が、本部と店舗オーナーに損害賠償を求めて訴えた事件だ。16年に和解が成立したが、注目すべきはこのブラック環境に追いやられた男性のため、店の手伝いをした妻と長女のこの言葉だ。

 「時間に追われて仕事をして、寝たと思ったらまた仕事。思考できなくなった」(産経WEST 2016年12月29日)

 24時間の「便利さ」を当たり前のように提供し、さらに質の高い接客までが求められるコンビニで、本気でそれを実現しようと思ったら、やらなくてはいけない仕事は際限がない。そんなハードワークが人手不足でブラック化すれば、人間が「壊れる」のは当然なのだ。

 ならば、わずか2年あまりで隣近所に次々とコンビニができて、心身共に追いつめられたオーナー店長が、常軌を逸した「奇行」に走ることがあってもおかしくないのではないか。

 このようなドミナント地獄に象徴される、コンビニのフランチャイズシステムのひずみが、そこで働く者たちの人間性を崩壊させることは、何も筆者だけが言っていることではなく、さまざまな元オーナーやFC本部にお勤めだった方たちも認めていることだ。

 例えば、土屋トカチ監督の『コンビニの秘密 ―便利で快適な暮らしの裏で』というドキュメンタリー映画がある。タイトルの通りに、我々が享受している「便利さ」が何を犠牲にして成り立っているのかが非常によく分かる内容なのだが、そこで興味深いのは、作品中に大手コンビニの法務部に勤めていた男性が登場し、フランチャイズシステムについてこんなことをおっしゃっていることだ。

 「一言で言うと、奴隷制度とか、人身御供システム」

 どきつい表現だと思うが、実は見事に本質を突いていることが、先ほどのファミマのケースをみれば分かる。

 8カ月で4日しか休みがもらえずなくなった男性は、幾度となくオーナーや本部に自分の窮状を訴えていたが、返ってきたのはこんな血も涙もない対応だった。

 『オーナーは「自分は病身なのにこんなに働いている。もっと頑張れ」ととりつく島もなく、本部から派遣されるスーパーバイザーも改善策を講じなかったという』(同上)

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