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» 2018年10月03日 08時30分 公開

雇用ジャーナリスト海老原嗣生が斬る:「就活ルール廃止」後も“新卒一括採用”がなくならない、これだけの理由 (3/6)

[海老原嗣生,ITmedia]

経団連は「後ろ倒し」に反対してきた

 経団連と日本商工会議所は「後ろ倒しの方針」に、最後まで反対姿勢を示してきた。両者の言い分は、「後ろ倒ししたらルール違反が横行する。それを規制することはできない」(経団連)、「大手の採用が終わらないと学生が流れない中小企業にとって、後ろ倒しすると採用期間が短くなる」(日本商工会議所)というところだ。結果は、まさにこの両者の主張通りになった。

 経団連は産学官から取り囲まれて現行ルールを押し付けられたのだ。にもかかわらず、このルールは経団連が作ったという誤解が広がっている。

「後ろ倒し指令」は誰も救わなかった

 政治まで動いて決めた「8月1日」を選考解禁にしたことで、学業阻害は以前より激しくなった。まず、8月1日に選考を解禁するとしても、会社説明会はその前に実施する。そこで、ルールを守った企業の説明会は、学生の前期授業期間に重なってしまった。就活で学生が物理的拘束を一番受けるのは説明会なのだ。それが前期授業期間に重なってしまう。旧ルールの4月1日選考解禁では、春休みに説明会が集中していた場合とは大きな違いだ。さらに、「ルール違反企業」と「順守企業」に分かれたため、学生は2回就活をしなければならないので活動期間も延びた。

 その上、「ルールを守った企業は採れなくて、ルール違反企業は採れる」という状況が生まれ、ルールへの信頼度は失墜した。結果、総理の肝いりで進められた採用活動の後ろ倒しには不満ばかりが募ることになる。

 ちなみに内閣府の調査によると、この変更後に57%の学生が「負担が増えた」と答えている。日経新聞が154大学の学長に実施したアンケートでは、94.2%が「問題あり」と答え、選考解禁の最適期は旧来ルール通り「4月」が57.8%で、「8月」と答えた学長はわずか8.4%しかない。翌年以降、選考解禁は6月1日に2カ月間は前倒しとなったものの、学長アンケートでは、「5〜7月」を最適と答えたのはたった9.7%だ。だから2カ月間の前倒しという応急措置も大して意味はない。6月1日選考開始では、説明会も面接も前期授業期間に重なってしまうからだ。

 結局、大学と政府が声を上げ、同友会や貿易会が悪乗りをした施策は奏功しなかった。企業側も大学側も本音では、選考解禁を4月1日に戻したいのだ。だとすると、経団連会長の発言はあくまでも観測気球にすぎないといえるだろう。想定通り、この発言を受けて、「ルール廃止だけはやめてほしい」と大学・行政が色めき立った。

phot 就活の後ろ倒しに対し、半数以上の学生が「負担が大きくなった」と回答した(内閣府Webサイトより)

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