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» 2018年10月03日 08時30分 公開

雇用ジャーナリスト海老原嗣生が斬る:「就活ルール廃止」後も“新卒一括採用”がなくならない、これだけの理由 (5/6)

[海老原嗣生,ITmedia]

「既卒の新卒扱い」は成功事例が少ない

 「新卒採用枠に既卒者が応募してもOK」という施策はどうだったのか。これは11年の民主党政権時から、ソニーなどの大手企業が実施していた。同友会も新卒採用の改善策として、「学卒後5年程度の若者」を新卒採用の対象とするように提言している。ただ、この仕組みを取り入れた大手企業でも目立った成果は上がっていないというのが現状のようだ。

 一つの仮説を考えてみよう。まず、大手企業が欲しがる人材は、すでにある程度の企業に就職している場合が多い。とすると、その企業を辞めてまで転職するのははばかられる。

 例えば新卒でソニー志望がかなわずパナソニックに入った人は、よほどのことがない限り、ソニーを受けなおすことはない。仮に転職をするとしても、新卒で入社するよりは、社会人経験を考慮してくれる「第二新卒採用」の求人を受ける。だとすれば、「新卒扱い」に応募する人は少ないのではないだろうか。

 また、そんな少数の「既卒応募者」がいたとしても、採用基準が下がることはない。とすると、入社実績の多い上位校出身でないとまずチャンスはないのだ。結局、既卒者が新卒採用に応募できるようにしても、「上位校出身で人物的にも優秀な学生が、何を思ったか就職しなかった」というレアケースでしか該当者は生まれないと思われる。だから、筆者は「既卒の新卒扱い」は実績があがっていないのではないかと考えているのだ。

「第二新卒拡充」が本道

 「新卒に既卒者も混ぜる」という提案よりも、第二新卒採用をより浸透させた方が良いのではないだろうか。欧米同様、欠員に応じて随時募集される職務別採用が、日本でいう第二新卒採用なのだから、それこそ本当の「脱日本型」といえるだろう。

 実は日本の超大手(従業員数5000人以上)企業でも、第二新卒採用は実施されている。少し古い調査となるが、04年に実施された「第二新卒の実態調査」によると、従業員5000人以上の超大手100社のうち、過去3年に第二新卒者を採用した企業は実に50.5%と半数を超えていた。ちなみに、従業員5000人を超える超大手企業は日本全国でも500社程度なので、調査対象数の100社はそれなりの捕捉率である。

 第二新卒採用をしていないのは一部の企業だ。ただその一部が、名の知られた人気企業のためやけに目立ち、結果、第二新卒は普及していないように見えているのである。

 調査対象となった01〜03年は新卒の氷河期直後に当たり、採用をやめていた企業も少なくないのだ。そうした企業を除いて、新卒採用をした企業を分母にした場合、割合はもっとずっと伸びるだろう。しかもそれから現在までの15年間に、例えば大手総合商社のような新卒採用固執の象徴とも思われた企業にまで、第二新卒が広まっている。既卒を新卒に入れ込むよりも、第二新卒採用の方が企業経営としても合理的ではないだろうか。

phot 第二新卒者を採用した企業は半数を超えていた(労働政策研究・研修機構「第二新卒の実態調査」より)

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