土肥: お客さんの顔と名前が一致しないという問題があって、それを解決するためにパスを発行したわけですが、その後いかがですか?
柚木: パスを利用している人たちとはとてもいい関係ができていて、これまで大きなトラブルは起きていません。初めて来られる人にとって、どんな人が泊まっているのかはとても大切なことなんですよね。一緒に泊まっている人が「ちょっと……」となれば、それだけでホステルの評価が下がってしまう。おもしろい人がたくさん泊まっていれば、初めてのお客さんも楽しんでいただけるので、評価も高くなる傾向があるんですよね。
また、パスを利用している人たちの間で新しい動きも出てきました。生まれ育った街をPRしたり、現地に行くツアーを開催したり、現地の農業高校とのパイプをつくったり。このほかにも私が知らないところで、さまざまな企画が進んでいるかもしれません。
土肥: 「パスを使ってホステルに泊まる」と聞くと、シェアハウスのようにも感じますが、ちょっと違うような。
柚木: シェアハウスの規模にもよりますが、ホステルの場合、同じ部屋の中で行動するので、新しい刺激がたくさんあるかもしれません。一般的なカフェで隣の人に話しかけられると、ちょっと気持ち悪いですよね。でもホステルの場合、それが許されるのかなあと思っています。
このような話をすると、「いつも一緒にいるのは嫌だな」と思われるかもしれませんが、絶対に交流しなければいけないというわけではありません。ちなみに、私はよくゲストハウスを利用するのですが、日中の半分以上はベッドでPCをいじっているんですよね。旅をしているときも仕事はしなければいけないので、ベッドで作業をする。仕事が終わると、たまに交流するといった感じですね。
土肥: シェアハウスのようでシェアハウスではない。じゃあ別荘かというと別荘でもない。どのように表現すればいいのでしょうか?
柚木: 別荘の場合、維持管理をするだけでもそれなりのお金を支払わなければいけません。定期的に窓を開けて空気を入れ替えないと、家がどんどん痛んでしまう。庭も床も窓も掃除をしなければどんどん汚れていく。そうなってしまうと、足が遠のいてしまう。「汚いところには行きたくないなあ」と。
別荘にはこうした問題がありますが、ホステルの場合、掃除をする必要はありません。光熱費もいりません。ただ、一般的なホテルのようなところではありませんし、家でもありません。というわけで、ホテルと家の間のような場所にできればなあと考えています。
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