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» 2018年11月09日 07時00分 公開

河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」:医師の命は軽い? 過労自殺を生み続ける“加害者”の正体 (2/4)

[河合薫,ITmedia]

「過労自殺」は長時間労働だけの問題ではない

 過労死とは、いわゆる「突然死」です。長時間労働による過重な負荷が脳や心臓にかかって引き起こされる、脳血管疾患もしくは心臓疾患を原因とする死亡です。

 国内外の多くの研究で、長時間労働および深夜勤務と、脳血管疾患や心臓疾患は強く関連していることが認められています。週50時間を超える勤務でリスクが高まるとする報告もあります。

 つまり、やる気とか仕事好きとか関係なく、長時間労働によって睡眠時間が減ると「疲れる→休む→回復する」というサイクルが機能しなくなり、体は確実に蝕まれます。そして、ある朝突然、心筋梗塞で亡くなったり、くも膜下出血で倒れてしまったりするのです。

 一方、過労自殺は、仕事上の強い心理的負荷により、生きる力がなえた末の死。重い責任、過重なノルマ、達成困難な目標設定などにより精神的に追い詰められ、長時間労働で肉体的にも極限状態に追い込まれる。

 特に、“overwork”すなわち「自分の能力的、精神的許容量を超えた業務がある」という自覚が強まると、過労自殺を招く確率が高まります。

 本当はSOSを出したいのに、受け止めてくれる人がいない。本当はもっと生きたい。でも、生きているのがつらい。その結果、「死」という悲しい選択をしてしまうのです。

 過去10年で10倍も増えた過労自殺(未遂者を含める)をなくすには、「長時間労働」だけでなく「職場のストレス要因」も除去し、人間関係のいい職場づくりをめざすことが必要不可欠。

 繰り返しますが、「過労自殺」は、単に「労働時間を短くすればいい」というものではなく、本人を追い詰めるストレスも同じように考慮すべき問題なのです。

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