日本の製造業を代表する企業、日立製作所がグローバル事業の拡大に向けて大きく舵を切っている。
グローバルで戦える人財の育成や獲得のために、2012年度以降、日立グループ全体の人事マネジメント施策を全世界で共通化するなど、優秀な人財がより能力を発揮できる環境を整えてきた。具体的には、海外を含めた全社員約35万人(12年度当時)を対象にデータベースを構築したほか、管理職以上のポジションで統一的な評価基準を設けてきたのだ。人事施策の責任者である中畑英信代表執行役専務に、導入までの経緯と狙いを聞いた。
――「2018中期経営計画」では、18年度の売り上げ目標に海外比率55%を掲げるなど、海外の割合が高くなってきている。日本国内の売り上げを上回る目標になっているが、それだけ海外を重視する理由は何なのか。
日立はリーマンショック後の08年に、7873億円もの赤字を出した。その時の危機感は相当なもので、私も「会社が潰れるかもしれない」と思ったことを今でも覚えている。だがその後、赤字事業や低収益事業に対して、ポートフォリオを見直したり、上場していた会社を日立に取り込んだりといった対策をすることで、「V字回復」を遂げた。
その後、日立が今後も成長を続けるためには、日立がこれまで提供してきた社会インフラとITに関する経験・ノウハウを融合させ、社会の課題を解決する「社会イノベーション事業」への注力と、成長マーケットである海外での事業拡大が重要だと考えた。そのため10年に中西宏明会長(当時社長)が発表した「2012中期経営計画」の中で「社会イノベーション事業」「グローバル」を掲げたのだ。
13年に発表した「2015中期経営計画」では、その取り組みにさらに具体性を持たせた。単によい製品を作り、販売するだけでなく、顧客の課題を解決するサービスやソリューションを提供するためのビジネスである「社会イノベーション事業の展開」と、グローバル企業と肩を並べて勝負することで、日立の成長を実現するための「グローバル事業の拡大」を鮮明に打ち出したのだ。
現在、東原敏昭社長が進める「2018中期経営計画」では、8%超の営業利益率を目指している。その達成のためには、10年から取り組んでいる「社会イノベーション事業」の拡大が欠かせない。日立は創業から100年間、優れた技術でよいプロダクトを作り、社会に貢献するというプロダクト・アウトを志向してきたが、プロダクトを作るだけの会社は世界にいくらでもあるのが実情だ。
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