土肥: 劇場は「暗い」「音がしない」設計になっているわけですが、映画が始まって驚いたことは「黒い」こと。他の映画館で、夜中に何かをしているシーンを見ていると、「暗くてよく分からないなあ」と感じることがありますが、ドルビーシネマの場合、暗いシーンはより黒く感じるのに、なぜか登場人物の行動がよく分かる。
「黒い」ことばかり強調していますが、他の色も鮮明に見える。クルマが走行しているシーンを見ると、ヘッドランプはかなり明るいし、テープランプもかなり赤い。クルマがどのくらい汚れているのか、といった細かいところまでよーく見える。なぜ、こんなに“見える”のでしょうか?
中山: HDR(ハイダイナミックレンジ:High Dynamic Range)という技術を導入していまして、簡単に言えば、私たちが目にする世界を再現する――。これを目指しているんですよね。
先ほどドイさんは「黒い」とおっしゃいましたが、暗いものはより暗く、明るいものはより明るく、表現できるようになりました。色の表現でも、赤色であればより濃淡をつけることができるんですよね。
土肥: 明るさなどを数字で表現することはできるのでしょうか? 例えば、過去のモノと比べてこのくらい違うとか。
中山: 従来の標準的なプロジェクターが表現できる輝度は48nits(nit:輝度を示す単位。1nitは、ロウソク1本程度の明るさに相当する)ですが、ドルビーシネマは108nits。つまり、従来のモノと比べて、2倍以上の明るさになっているんですよね。
また、黒と白のコントラストはどのくらいあるのか。従来のモノであれば、コントラスト比は約2000:1なので、黒は乳白色のかかった灰色になっているケースが多かったんですよね。新たに導入したモノは、100万:1を実現しました。
土肥: 従来のモノと比べて、500倍以上。
中山: 本物以上の黒になるので、夜のシーンでも登場人物の行動が鮮明に分かるようになったのではないでしょうか。
土肥: ふむ。ただ、映画を見ていると、すぐにリアルな映像に慣れてしまって、それが普通に感じてしまう。うまく言えないのですが、デジタル放送を見たときには「うわー、きれいだなあ」と感じても、すぐに慣れてしまうような感じ。
こうした印象を受けたので、これからの客は映画と劇場の“相性”を考えなければいけなくなる。巨大なスクリーンもあるし、3Dもあるし、4Dもあるし。映画館によって特徴が違うので、自分が見たい映画に合ったところを見つける、そうした技術も必要になるのかなあと。
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