土肥: 劇場は「暗い」「音がしない」「映像がきれい」な設計になっているわけですが、そうなると「音もいい」でなければいけません。博多の劇場には、既に他の映画館でも導入している「ドルビーアトモス」を採用しているんですよね。
中山: はい。従来、音は平面で出ていました。前後左右から聞こえてくる、といった感じで。新たな劇場では「上からも下からも聞こえてくる」ようにしました。高さの概念が加わることで、三次元で音を出すことができるようになったんですよね。
土肥: 上からモノが落ちてくるシーンの場合、実際に膝に何かが落ちてくるように、「ずーん」と感じることができました。映像や音声などが大きく変わると、映画のストーリーにも影響がありそうですね。
中山: 先ほど申し上げたように従来のプロジェクターで投影すると、さまざまな制約があるんですよね。「このシーンは暗くなるから、このようなストーリーで」といった具合に。
映画スタッフのなかに「カラーリスト」と呼ばれる人がいるのですが、彼らは何をしているのか。監督と一緒に、映像の色を調整しているんですよね。例えば、登場人物2人がいて、右の人に注目してもらいたい場合、どうするのか。右の人の顔を少し明るくするなど、微妙に調整しなければいけません。
そうすることで、観客は右の人に注目するわけですが、こうした作業はものすごく時間がかかる。一方、ドルビーシネマの場合、明るくてコントラストもあるので、関係者は「色を調整する作業時間が短縮されました」と言っていました。
土肥: 見え方などが変わることで、これからの映画づくりは変わっていきそうですね。「夜のシーンなのに、灰色に見えるからやーめた」「音に迫力がないので、このシーンはカットで」といった感じで、シナリオを変更していたことがあったかもしれませんが、これからは違うかも。夜に主人公がウロウロしたり、上からモノがよく落ちてきたり(笑)。こうしたシナリオが増えるかもしれません。
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