土肥: 米国、欧州、中国などで展開しているドルビーシネマが、日本にも上陸しました。映画館に入ってみて、最初の印象は「暗い」。暗いといってもネガティブな雰囲気が漂っているわけではなくて、物理的に「暗い」。入口にミニシアターのような小さなスクリーンに映像が流れていて、そこから劇場に入るまで20〜30メートルほどの距離がありますが、ものすごく暗いですよね。突き当りに重厚な扉があって、ここはさらに暗い。
そーっと扉を開けて、やっと劇場に入れるわけですが、そこも暗い。もちろん、階段の足元にはうっすら明かりが点灯していますが、他の映画館に比べて「暗いなあ」という印象を受けたのですが、こうした演出に何らかの狙いがあるのでしょうか?
中山: 本編が上映される前は、さらに暗く感じたのではないでしょうか。他の映画の紹介が終わって、さあ本編が始まるぞというときに、何も映し出さない時間があるんですよね。暗くて見えない、音もしない。そうした雰囲気のなかで、スクリーンに映像がどーんと映し出される。なぜこのようなことをするのかというと、お客さんに映画の世界に入っているかのような錯覚を感じてもらいたいから。
あと、映画を見ているときに、スクリーンに映像以外のモノが映り込んでいたら嫌ですよね。というわけで、劇場は真っ暗になるような素材を使っています。例えば、壁とシートは、光を反射しにくい素材を使っているんですよね。
土肥: そんなモノがあるとは。何という素材ですか?
中山: 企業秘密なので、言えません(笑)。ただ、どうしても映像を反射してしまうモノがあるんですよね。それは人間の顔。これはさすがにどうしようもない。
土肥: 映画が始まる前に、お客さんに覆面マスクをかぶってもらうわけにはいきませんからね。それにしても昔の映画館とはかなり違う。シネコンが登場する前の映画館といえば、上映中でもどんどん客が出入りしていました。しかも、扉を開けると外部の光が差し込んでくるので、人が入ってくるたびに「まぶしいなあ」と感じていました。
中山: 遮断しているのは光だけではありません。音も入ってこないような設計になっているんですよね。サンフランシスコの劇場の下には、地下鉄が走っているので、振動や音があっても仕方がないのですが、それではいけません。映画館と地下鉄の間に数メートルのコンクリートを仕込んで、振動も音も感じないような設計にしました。
ちなみに、エアコンは座席の下に仕込んでいます。多くの映画館は天井に設置されているかと思いますが、その場合、観客の顔に風が当たって、モーターの音も聞こえてくる。つまり、邪魔をされるんですよね。だから、座席の下。どんだけ映画好きの人が考えているんだよ〜、といった設計ですよね。
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