「被災時の赤ちゃんの命綱」液体ミルクは普及するか グリコが発売へ熊本地震で脚光浴びる(2/2 ページ)

» 2018年11月30日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]
前のページへ 1|2       

真のニーズは未知数

 ただ、日本では基本的に乳児を母乳か粉ミルクで育てる習慣が一般的で、液体ミルクがどれだけ受け入れられるかは未知数だ。実際、9月の北海道地震の際は被災地に支援物資として送られた液体ミルクがほとんど使われなかったとされる。江崎グリコの担当者は「まずは自治体で備蓄してもらいながら、賞味期限の近くなった商品を保育園などに配って普及につなげていく」と説明する。

photo 試作品の液体ミルクを哺乳瓶に注ぐ江崎グリコの担当者

 平時にどれだけ需要があるかも焦点になってくる。別の乳業メーカーの担当者は「備蓄用向けだけだとちょっとニーズが狭いようにも思える。どれだけ需要があるかどうかはまだ見えていないのでは」と話す。少子化が進み乳児の数が減る中、粉ミルク市場のパイの一部を奪うだけ、という見方も業界では存在する。

 液体ミルクの商品化に向けた法整備を省庁などに訴えてきた一般社団法人・乳児用液体ミルク研究会代表理事の末永恵理さんは「フィンランドでは液体ミルクが主流だが他の欧米諸国では粉ミルクがメーンで、外出時などサブの用途で液体が使われている」と説明する。日本でも高価格帯のレトルトの離乳食が外出時に便利なことからよく使われており、同様に液体ミルクも利便性から支持される可能性があるとみる。

 一方で末永さんは「商品だけでなく(使い方などの)情報も広まらないと消費者は使おうとしない。周知がかなり重要になる」と指摘する。母乳による育児を推進するWHO(世界保健機関)の定めた国際基準に基づいて粉ミルクや液体ミルクの広告は現在、日本でも事実上規制されている。「公的な立場から、液体ミルクがこういったものだと正しい説明を広める必要がある」(末永さん)。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.