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» 2018年12月06日 07時00分 公開

世界を読み解くニュース・サロン:中国発「遺伝子操作ベビー」の衝撃 “禁じ手”を使った人類の未来 (2/5)

[山田敏弘,ITmedia]

「デザイナー・ベビー」というパンドラの箱

 まずヒト遺伝子のゲノム編集について簡単に説明したい。人間のDNAには遺伝子の情報が全て記録されており、DNAは生物の設計図とも言われている。そして、そうした遺伝子情報は専門用語でゲノムと呼ばれている。つまり、ヒト遺伝子のゲノム編集とは、人間のDNAを改変することを指す。

 人間のDNAには、2万2000個程度のさまざまな遺伝子が存在する。生まれ持った先天的な特徴は、遺伝子によってあらかじめ決められている。

 実はここ最近、特に精子や卵子など生殖細胞系のゲノム編集が、数年内には実現すると見られてきた。要するに、技術的には今回のゲノム編集はすぐに実現可能であると認識されていたのだが、賀建奎・副教授は今回、それを実現させたらしい。先日、ある有名な日本人医師と話をする機会があったのだが、この医師は「彼はうそをついてるかもね」とぽろっと言っていた。だが世界的には、副教授が「パンドラの箱を開けてしまった」と大騒ぎになっている。

 その「パンドラの箱」とは、いわゆる「デザイナー・ベビー」の問題だ。デザイナー・ベビーとは、生まれる前に遺伝子を編集して作り出された人間のことだ。例えば病気の要因になる遺伝子や、親の遺伝子などの情報から、あらかじめDNAを改変することで、自然に生まれるよりも「健康」な子供をつくる。また容姿や能力など、今の世の中の価値観によって「優れている」とされる特徴を持つように遺伝子をいじってしまう、ということもできる。

 この技術により、これまで人類ができなかった「人間をつくり出す」ような行為ができてしまうのである。これが、倫理に反すると認識されている点だ。というのも、この行為が乱用されれば、優れた遺伝子を持つ人たちが世にあふれ、一方でゲノム編集されずに生まれる「遺伝子的に劣る人たち」が差別されていくという世の中になりかねない。経済的な差から発生する「遺伝子格差」なんて現象も見られるようになるかもしれない。

 さらに改変したい遺伝子を間違ってしまう(オフターゲットと呼ばれる)問題や、ゲノム編集で細胞が突然変異してしまいかねないという危惧もある。将来的に遺伝子操作を原因として、何らかの疾患が発生する可能性もあり得る。

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