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「東大生起業ブーム」の虚実未来のホリエモンか、単なる“意識高い系”か(2/4 ページ)

» 2018年12月25日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

「学生は守るもの無いのがメリット」

 加茂さんが手掛けるのは、全国の理系大学院生向けの就職支援サービス「LabBase」だ。院生たちに自分の研究内容といった個人情報を記入させ、システムに登録してもらう。そうして集積したデータベースを顧客企業の人事が検索し、欲しい人材にメッセージを送る仕組みだ。

photo 東大生の加茂さんが立ち上げたPOL(同社Webサイトから引用)

 加茂さんによると理系の大学院生の就職は多くの場合、担当教官などの推薦で決まる。院生はそもそも就職サイトに登録して就活することも少なく、企業側はなかなかアプローチしづらいことから、その機会を設ければ商機になると考えた。

 約8000人の理系院生が登録しており、8割強が東大や九州大学などの旧帝大という。研究内容も詳細に登録されており、企業側は即戦力として期待できるエリート理系学生を見つけやすい。本田技研工業などの大手からベンチャーまで約100社が利用する。学生側も、自分の専門分野を本当に生かしてくれる企業とつながりやすくなるメリットがある。

 このサービスを現役学生が手掛けるメリットとして加茂さんが挙げるのが、大学に深く入り込んだ独自のビジネスモデルだ。POLは全国の大学に、「メンバー」と呼ばれる学生約100人のネットワークを持つ。彼らに対価を払って自分の大学の研究室を訪問してもらい、教員にも協力してもらい院生の登録を増やしているのだ。大学の研究室には外部の企業が入り込んでくるのをあまり快く思わない教員も多く、「自分たち現役の学生がやっている、というビジネスのストーリーが重要だった」(加茂さん)。

 中古車販売のガリバーインターナショナル(現IDOM)の元役員を共同創業者に迎え、今は社員10人を抱える。加茂さんは「在学時の起業はキャリアを早いうちから積める上に、家庭など守るものもない。多くの大人に応援してもらえやすい点も大きい」と、学生ベンチャーのメリットを強調する。

「グノシー生んだ」起業サークル

 実際、東大では新入生の頃から起業を学ぶサークルも人気を集めている。「起業で世界にインパクトを与えたい学生が集まります」とWebサイトでうたう「東大起業サークルTNK」だ。厳密には約40人のメンバーのうち東大生は約4割だが、残りも早慶をはじめエリート校の学生が集う。既にGunosy(グノシー)の創業者、福島良典さんを輩出している。

 主に1〜2年生で構成され、例年新入生からの応募が殺到して18年は5倍の倍率でセレクションを行ったほどの人気を誇る。週に1回、平日夜にベンチャーの社長などを呼んでの勉強会が主な活動内容だ。エンジニアリングやデザインなど起業に必要なスキルは何かや、求められるマインドなどを学ぶという。

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