ホテル新築の総工費は1000億円――。前回の東京五輪前の1962年に開業した旧ホテル建設の工費55億円と比較すると、18倍になる計算だ。
新しいホテルとなると、旧ホテルのイメージを一新するのが通例だが、オークラの場合は、事情が違った。オークラはマイケル・ジャクソンやブラッド・ピット、マドンナなど世界のセレブが愛用していたことで知られる。旧本館を閉鎖するときに、建て替えに反対する「セーブ・ザ・オークラ」という署名活動が始まり、ポール・スミス氏など著名なデザイナーなどを含め約6000もの署名が世界中から集まったのだ。
このような経緯から、オークラを象徴する照明器具「オークラ・ランターン」や、本館ロビーの「梅小鉢のテーブルと椅子」などを修理して、新しいホテルでも再利用することになった。メインロビーの空間は旧本館と同じ雰囲気が味わえるようにし、壁の世界時計など装飾品はできるだけ残す。
計画が順調に進む一方、ホテル内に店を構える老舗すし店「久兵衛」が、ホテルの建て替えに伴って、店の場所が隅に追いやられたとして、オークラに1000万円の損害賠償などを求める訴訟を東京地裁に起こした。50年以上ホテル内で営業してきた老舗としては、ホテル側の対応に我慢できなかったようだ。11月12日に第1回口頭弁論があり、「久兵衛」側の言い分に対して、オークラ側は請求の棄却を求めた。この件について筆者は「久兵衛」に問い合わせたが、「弁護士に任せている」との回答を得た。
この再開発は東京五輪までに半分以上はできあがる予定だが、その後に「東京を国際金融都市にする」という小池百合子都知事の構想実現も見据えて、東京都や各社は外国人居住者、ビジネスマンが過ごしやすい環境を作ることに腐心している。大手町などビジネスだけの街作りとは一味違った、外国人の暮らしとビジネスを一体化した、これまでにないビジネスセンターになることが望まれるだろう。
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