観光列車を「移動手段ではなく乗車目的」の列車と定義すると、古くはお座敷宴会列車までさかのぼる。そこから語ると長くなるので、最近の観光列車のブームを捉えると、09年から隆盛期を迎えた。
それまでも年に1列車か2列車の新しい列車はあったけれども、09年は「SL人吉(JR九州)」「リゾートみのり(JR東日本)」「天空(南海電鉄)」など5列車が誕生。10年は2列車にとどまったものの、11年に10列車。12年は3列車、13年は8列車、14年は11列車、15年は9列車、16年は15列車、17年は12列車、18年は8列車が走り始めた。そろそろ打ち止めかと思っていたけれども、19年は4列車のデビューが決まっている。
観光列車の増殖はとどまるところを知らない。現在、日本で観光列車は少なくとも127列車ある。これは、同じ車両を使って別の名を持つ列車を省いた数字だ。このうち、食事付き、または車内で飲食物の販売がある列車は82もある。ビール列車など夏期などに単発で運行するイベント列車は除いた数字だ。
これだけの観光列車が存在する国は他にあるだろうか。日本はもはや「観光列車大国」といえそうだ。これだけあれば日本の観光業を語るとき、観光列車を省くわけにはいかない。訪日観光客を増やそうなどという話でも、重要なツールになるだろう。
そして、観光列車の増殖は続くか止まるか。まだ続く、と思われる。上記の127の観光列車を日本地図上に記したところ、北海道以外にも「観光列車空白地帯」がある。
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