最後に出なかった「ガンダム」は、どのようにして殻を破ったのか水曜インタビュー劇場(指導員公演)(4/7 ページ)

» 2019年02月06日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

ガンダムヘッドが出てきません

土肥: 振り返ってみて、大変なところはどこだったのでしょうか?

長谷川: 「ここまでやりたい」という理想があるのですが、それを全部取り入れてしまうと、コストが大幅にオーバーしてしまう。どの部分を残して、どの部分を削除するのか。引き算をしながら、お客さんに喜んでもらう商品をつくらなければいけません。そのバランスを考えることが難しかったですね。

土肥: 職人という立場から考えると、「あれも入れたい」「これも入れたい」「最高の作品を完成させたい」という気持ちもあったのでは?

長谷川: 20年以上もガンプラの開発に携わっているので、自分はかなりマニアックだと思うんですよね。「そこまでやると、やりすぎてしまうな。これくらいにしておこう」と抑える感覚がある。もちろん、自分の考えがすべて正解だとは思っていませんが、「このくらいの演出をすれば、ファンの方たちは喜んでくれるはず」といった相場がなんとなく分かるので、それをガンダムヘッドに落とし込んだといった感じですね。

 「あれを止めて」「これを落として」といった具合に作業を進めて、商品が完成したわけですが、ガンダムヘッドの場合、それでもコストが高くついてしまいました。あまり大きな声では言えませんが、初回出荷分しか売れなかったら、採算は厳しくて……(汗)。

側面装甲はファンが喜びそうな塩梅で設計したという(C)創通・サンライズ

土肥: カプセルトイの商品なので、丸くできるかどうかといった懸念はあったものの、パーツの形を変えたり、大きさを変えたりしながら、商品を完成することができたわけですね。順調、順調……。

長谷川: いえ、実は最後に落とし穴がありまして。「よし、完成!」と思ったのですが、カプセルトイの自販機から商品が出てこなかったんですよ(涙)。

土肥: えっ、商品が出てこない? サイズが大きすぎて、出てこないという意味ですか?

長谷川: はい。

土肥: ちょ、ちょっと待ってください。自販機から出てくるサイズは決まっていますよね。当然、それをご存じのはず。その数字を把握しているはずなのに、なぜ出てこないことに?

長谷川: こんこんと詰めていったのですが、最後の詰めが甘かったんです。開発が終わって、「やれやれ」と一息ついたときに、「長谷川さん! ガンダムヘッドが出てきません!」といった連絡がありまして。

 当社の検査基準はかなり厳しくて、カプセルトイの場合、何度も何度も回すんですよね。そうした中で、角度によっては出てこないことが分かってきました。実は、たまーにあるんですよね。たまーにこういうことをやっちゃう。

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