では、銭形が人工知能による捜査にシフトしたとき、部下の仕事マインドはどう変えなければならないのか。求められるのは「自律した判断力」である。
部下たる捜査員が得られる情報は、これまで「銭形から与えられる指示」しかなかった。しかし、これからは「銭形本人」と「人工知能」の2カ所から情報が発信されることになる。時には両者の意見が食い違うこともある中で、毎回上司の指示を確認できればよいが、そうできないタイミングも多いだろう。その場合、これまでであれば「指示待ち」をしたとしても責任に問われることはなかった。しかし今後は上司の指示がなくとも人工知能のリコメンドはあるため、何らかの行動をせねばならない。
もちろんその時、ただ人工知能の言う通りに動けばいいというものではない。人工知能の言いなりに動いても失敗すれば「なぜ機械の言うことを鵜呑みにしたのか!」と叱責されるだけだ。人工知能は責任をとってくれないのである。
与えられる情報が増えるということは、期待される役割も高度になっていくのは組織の原則である。今後、私たち部下は望むと望まざるとにかかわらず、人工知能を通してこれまで以上に多くの情報に接せざるを得ないだろう。「知らなかった」が通用しない時代に突入していくのだ。
これまでは「上司が責任を持ち、部下が行動する」というのが組織のルールであった。しかしこれからは「人が責任を持つ」に変わっていく。責任を持ちたくないがゆえに管理職になりたくない若者が増えたという調査もあるが、もはや管理職とは関係なく、人であるというだけで責任を持たざるを得ない。上司ではなく部下であっても、その評価の基準は「実行力」から「判断力」にシフトしていくのであろう。つまるところ、人工知能が導入されても、部下の意識が変わらない限りルパンは逮捕できないのである。
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