土肥: 時代の先端を走っているビジネスから、逆行するような店をオープンした。そんな印象があるのですが、不安はなかったですか?
角田: ものすごくありました。起業しても、たくさんの会社が潰れていますよね。自分のビジネスが成功するかどうかは分かりませんでしたが、「絶対に話題になる」と思っていました。なぜそのような確信をもてたのかというと、誰もやっていないから。だから、いい店をつくれば間違いなく話題になると考えていました。
土肥: 「いい店をつくれば」ということですが、角田さんは実店舗を運営した経験がありません。どこかの店を参考にしたのでしょうか?
角田: 実店舗をたくさん見て回りました。たくさん見ていくなかで、「この店はここがよい」「この店はここがよくない」といったポイントがなんとなく見えてきました。カセットテープの場合、普通のワゴンに入れてしまうと、安っぽいジャンク品に見えてしまう。
お客さんに懐かしいモノとして受け止めてもらうのに、どうすればいいのか。古いテーブルの上に、カセットテープごとにキャプションを付けて並べれば、ジャンク品ではなくアートのように見えてくる。このほかにも棚はどのようなデザインがいいのか、どこに置けばいいのか、といったことを考えて、いまのフォーマットに収まったという感じですね。
土肥: なるほど。オープン当初はどのような反響があったのでしょうか?
角田: アマゾンでネットに関係することをやってきたので、カセットテープ店ではネットを使わずにどこまでビジネスができるのかをテストしたかった。というわけで、SNSもせずに、通販もせずに。Webサイトには住所などの情報を掲載するのみ。最初の2年間はそれだけなので、宣伝費はほぼゼロ。
それでも店の前を通った人は、「ここで何を売っているのかな?」「カセットテープを売っているの?」といった感じで、入店される。そうした人たちがSNSなどで紹介してくれて、口コミで広がっていきました。何をもって成功と言えるのかよく分かりませんが、店は3期を終えました。1期目は初期投資などもあって、決算は赤字に。ただ、2期目、3期目は黒字を確保することができました。
このような話をすると、「順調なのね」と思われたかもしれませんが、短期的なことはあまり気にしていません。このビジネスをどうやれば継続させることができるのか。このことが重要だと思っているんです。
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