CDも苦戦しているのに、なぜ中目黒のカセットテープ店は好調なのか水曜インタビュー劇場(逆行公演)(2/6 ページ)

» 2019年02月13日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

相談しても反対意見だらけ

土肥: 角田さんはCDショップ「WAVE」でバイヤーなどを経験して、アマゾンで働くことに。そこで音楽や映像事業などを立ち上げて、会社を退職。その後、カセットテープ店「waltz」をオープンしました。音楽は「ダウンロードして聴いている」「ストリーミング配信を使っている」といった人が増えているなかで、「カセットテープの店をやるんだ〜」と言ったら、周囲から反対の声が多かったのではないでしょうか?

角田: 反対意見しかなかったですね。親しい人などに相談したところ、誰も理解してくれなくて、反対の声ばかり。「なぜアマゾンを辞めて、そんなことをやるの?」「なぜいまの時代にカセットテープなの?」といった声が多かったですね。反対意見ばかりだったので、周囲の人に相談することを止めました。

 2014年、会社に「やりたいことがあるので、辞めさせてください」と伝えたところ、そこでも反対されました。アマゾンは外資系なので、グーグルやアップルなどに転職する人が多い。「やりたいことがあるので」といった理由で辞める人はほとんどいなかったので、上司も困ったのかもしれません。「会社に不満があるのか?」と聞かれたことも。

 引きとめられたこともあって、会社で働き続けることに。ただ、アマゾンで14年間働いていて、人に人生を決められるのはよくないなあと感じていました。会社で働いていると、「あれをやってくれ」「これをやってくれ」「違う部署に行ってくれ」などと言われる。自分の人生だから、自分で決めなければいけないのに、会社で働いているとどうしてもそれはできない。そんなことを考えていると、やはりここを離れたほうがいいのではないかと考えました。

土肥: 会社で働くことが嫌になった?

角田: いえ、そういうわけではありません。アマゾンではさまざまな経験を積ませていただき、自分の成長を感じることができました。アマゾン以外の会社で働くことは考えられなかったので、起業することに。

土肥: ふむ。

角田: 誰もやったことがないことをやりたい、自分にしかできないことをやりたい――。このような気持ちが強くなって、15年3月に会社を辞めました。このときも、最後の最後まで「カセットテープ専門店を始める」ことは言いませんでした。自分の考えを伝えても、理解を得ることは難しい。だから、誰かに相談するのは止めて、実際にやって見せるしかないと思いました。そうすれば、理解してくれるのではないかと。

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