CDも苦戦しているのに、なぜ中目黒のカセットテープ店は好調なのか水曜インタビュー劇場(逆行公演)(4/6 ページ)

» 2019年02月13日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

ブームで終わらせてはいけない

土肥: 店を継続させるために、何が重要だと思いますか?

角田: 数年ほど前から、「カセットテープがブームだ!」などと報じられることが多くなってきました。盛り上げられて、消費されて、あっという間に熱が冷めてしまったら、意味がないと思っているんです。ブームにされないために、ブレーキをかけることも必要なのかなあと。

 メディアから取材を受けた際、このように聞かれることが多いんです。「カセットテープがブームのようですが、そのことについてどのように感じますか?」と。でも、僕はブームだと感じたことがありません。逆に、記者の方に質問をするんです。「あなたの周りで、カセットテープで音楽を聴いている人はいますか?」と。このように聞くと、ほとんどの人が「そーいえば、いないなあ」と答えるんですよね。

 じゃあ、なぜブームと言えるのか。「メディアで話題になっているので、ブームだと思う」という人もいました。メディアで働いている人がそんなことを言って大丈夫なのか? とちょっと心配になりますが、ふつふつと盛り上がってきているとは思う。でも、ブームだとは思っていません。

土肥: ふむふむ。

角田: 今後、カセットテープが主流になることは、絶対にない。月額1000円ほど払えば、4000万曲以上の曲を楽しむことができるストリーミング配信サービスを利用する人が増えていくでしょう。これは素晴らしいサービスだと思うのですが、このサービスが登場したことによって音楽を聴く人がどんどん離れている、といった矛盾が生じているんですよね。

 ストリーミングで音楽を聴くということは、ファミレスでドリンクバーを飲むようなもの。数百円払ったら何杯でも飲めるので「お得だなあ」と感じるかもしれませんが、実際にはそれほど飲めませんよね。

 音楽も同じで、「月額1000円払えば、4000万曲以上楽しめる」と言われると「お得だなあ」と感じると思うのですが、実際にはそれほど聴かないですよね。そして、どんどん聴かなくなっていく。なぜ、こうした現象が起きるのか。そこに「ありがたみ」が失われているからだと思っています。「ありがたみ」が損なわれると、人は離れていくのではないでしょうか。

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