とはいえインターネットで情報の送信が一瞬でできる現在、スウィフトの送金作業はまどろっこしい。速さだけなら飛行機で現金を輸送したほうが速いのだ。もう少し速く安価に国際送金ができないものか。
これを試みるテクノロジー企業が、04年に誕生した米リップル社だ。リップル社が提供するオンラインシステム「XRP台帳」では、各国の通貨が、XRPという暗号通貨に両替できる。XRPは本来エックスアールピーと呼ばれるべきものだが、日本では社名と一体的に「リップル」と呼ばれることが多い。
XRPは「ブリッジ通貨」の役割を果たす、XRP台帳のなかの現地通貨だ。この台帳のうえでは、異なる通貨のあいだでの送金が、XRPの橋渡しにより行われる。大まかに言うと、送金人は円をXRPに両替して送金、受取人はそのXRPを自国の通貨に両替して受け取る。迅速かつ安価に国際送金できる。
当然ながらXRPは、各国で別々の通貨が使われていることを前提とする通貨だ。しかしここで発想を変えてみたい。XRPそのものが世界通貨になれば、一番便利ではなかろうか。つまり、いちいちXRPで通貨を「橋渡し」するのではなく、XRPそのもので取引する。リップル社はそれを目指してはいないし、目指すべきというわけでもない。だが、もしそのような通貨があれば、国際送金は問題じたいが解消されてしまうだろう。
果たして、そのような日はやって来るのだろうか。
慶應義塾大学経済学部教授。ロチェスター大学 経済学博士課程修了(Ph. D. in Economics)。
『多数決を疑う』(岩波新書)、『マーケットデザイン』(ちくま新書)、『決め方の経済学』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。著書はアジアで多く翻訳されている。暗号通貨、投票システム、オークション方式などの制度設計(メカニズムデザイン)を研究。(株)デューデリ&ディールでは不動産オークション技術顧問として学知のビジネス活用に携わる。
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