倒産寸前の町工場がタオルで大逆転! ヒットの秘密は「糸」と「伝え方」累計680万枚(4/5 ページ)

» 2019年02月14日 07時30分 公開
[加納由希絵ITmedia]

「バスタオルの半分サイズ」が女性の心をつかむ

photo 浅野撚糸 常務執行役員の河合達也氏

 しかし、苦労して生み出したエアーかおるも、当初は売れなかった。高級なタオルといえば、かつては贈答用が一般的で、自分のために買うことはあまりなかった。有名ブランドでなく、柄もついていないタオルが高く売れるわけがないと、タオル商社からはほとんど見向きもされない。

 「最初に販売された名古屋の大型雑貨店や百貨店には、従業員とその家族で自ら買いに行っていました。売れないと置いてもらえなくなるので……」(河合氏)。売れたのは月2500枚程度。赤字から抜け出せずにいた。

 そんな状況が3年続いた後、ついに転機が訪れる。新商品として、バスタオルの半分の大きさの「エニータイム」をラインアップに加えた。これが大ヒットしたのだ。

 なぜ、そんな中途半端な大きさの商品が売れたのか。商品自体を変えたわけではない。実はそれ以前にも、同じサイズの商品はあったが、月に数十枚しか売れていなかった。

 変えたのは、商品の「伝え方」だ。従来の打ち出し方は、「柔らかい」「吸水性が高い」という“機能”が中心だった。ただ、それでは実際にどのような場面でどのように使えば便利なのか、イメージしにくい。

 そこで、「バスタオルの半分のサイズなのに、髪の毛まで含めて全身をしっかりふける」ことを最大の売りにした。さらに、バスタオルよりも干すスペースが小さくて済むため、洗濯に大きな負担がかからないことも訴求ポイント。女性、特に主婦層に向けてメッセージを発信した。「バスタオルからの切り替え」という新しいニーズの掘り起こしを狙った。

photo バスタオルの半分サイズの「エニータイム」がヒットした

 この新しい使い方を量販店やテレビ通販などを通じて提案し、女性の心をつかんだ。販売枚数は一気に月2万枚以上に。さらに、その後は全国ネットのテレビ番組で次々と取り上げられたことが追い風となり、売り上げはどんどん増えていった。

 殺到する注文に対応するために生産体制を整え、今では月20万枚を出荷するほどになった。

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