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「東京マラソンの仕掛け人」に聞く“ブームの作り方”ランニングにハマっていった女性たち(3/5 ページ)

» 2019年02月15日 07時15分 公開
[瀬川泰祐ITmedia]

ランニングにハマっていった女性たち

 実は、筆者の周りに、早野氏が仕掛けたマーケティング戦略のペルソナにぴったり当てはまった女性がいる。ランニングブームの真っ只中に、ランニングにハマっていったタレントの宮崎亜希さん(40)は、マラソンを始めた09年当時のことをこのように語る。

 「当時、私は体形作りのためにジムに通っていたんですが、ジムでランニングスカートを履いて体を動かしている方を見て、“あのスカート、かわいいな”って思っていました。ある日、そのジムが主催するランニングイベントに誘われたのですが、走りたくもなかったし、日焼けもしたくなかった。でも、何度も誘われているうちに根負けして参加することになりました。代々木公園の中をゆっくり5キロほど走るだけだったんですけど、順位をつけられなかったんですよ。その時、“あれ? 今までのスポーツとはなんか違う。私でもできるんだ”って感じたんです。その日の帰りには、お店にランニングスカートを探しに行っていました」

phot ランニングにハマった宮崎亜希さん(本人提供)

 彼女のコメントから、早野氏が仕掛けたマーケティング戦略が、ターゲットである女性層に、どのように届き、態度を変容させていったかがよく分かるだろう。こうして女性ランナーたちがさらに急増していくと、「美ジョガー」「ランニング女子」といった言葉が生まれた。女性ランナーの急増について、早野氏に質問すると、こう答えた。

 「女性が走り終わったあとに、ビールを飲んだっていいじゃないですか。ファッションに興味があって走っている、すごくいいじゃないですか。僕は昔シューズメーカーで働いていたことがあるんですけど、昔は靴の重さを10グラム軽くするためにたくさん研究して、トップランナー向けのメッセージを市場に送っていました。“あのオリンピック選手が履いているシューズだよ”ってね。でも、これでは、一般の人たちには全く届かないわけです。10グラム軽いことよりも、けがをしないとか、長く続けられるために足に優しい靴とか、おしゃれな靴が求められていたんですから。その反省を生かして、市場へのメッセージを変えていったわけです」

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