お店のミライ

なぜファミマの社会貢献は「24時間テレビ」のように見えるのかスピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2019年02月19日 08時10分 公開
[窪田順生ITmedia]
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単純なことを分かっていない企業は多い

 この発想でいけば、コンビニの強みは、地域に密着した便利さなので、これを提供することで、地域で苦しむ人々をバックアップするなんて思い浮かぶ。

 地域には「子ども」のために献身的な活動をするNPOやボランティアが山ほどある。「子どもを応援」というのなら、このような人たちをコンビニらしく支えればいい。例えば、イートインスペースなどを彼らに一部開放してもいいし、食事面のサポートをしてもいい。そうやってNPOやボランティアが駐在してくれれば、コンビニが地域の虐待や貧困に悩む子どもがいつでも駆け込むことができる場所になる。素晴らしい社会貢献だ。

 個人的には、今回の「こども食堂」は社会貢献などとうたわず、純粋に「子ども客獲得へ向けた販促イベントです」と発表したほうがよかったのではないかと思っている。

 善行というのはどうしてもあまり目立たないが、ファミリーマートは食品リサイクルをはじめ、環境や教育など幅広い分野で積極的な社会貢献活動をしている。

 それが今回のようにマーケティングとの境界線があやふやなことまで、「社会貢献だ」と言い張ってしまうと、ファミリーマートがこれまで取り組んできた素晴らしい社会貢献活動まで、足を引っ張られてイメージが悪くなってしまう恐れがあるのだ。

 今回のファミリーマートのケースを他山の石として、企業の方たちはぜひ自分たちの社会貢献を振り返っていただきたい。

 我々の社会貢献は、本当に自分たちのサービスを用いて社会に貢献しているのか。それとも、社会問題を利用して、顧客拡大など自分たちにビジネスへと貢献させようとしていないか――。

 バブル期に米国進出を果たした日本企業は、反日感情を抑えようと大金をつぎ込んで、「フィランソロピー」(社会貢献活動)に力を入れたが、どうせ偽善でしょと叩かれた。

 企業の強みを社会に還元しようという米国企業と異なり、「日本企業は社員の利益を追求することを一番の目的としている」(日経産業新聞 1991年9月27日)というのだ。

 実はこのあたりの基本的な思想は、30年経過しても変わっていないのかもしれない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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