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» 2019年02月28日 07時00分 公開

世界を読み解くニュース・サロン:ファーウェイの「スパイ工作の証拠」を米国が示さない理由 (5/5)

[山田敏弘,ITmedia]
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トランプはファーウェイ排除を見直す? そのヒントは……

 ではトランプは「見直し」をする可能性があるのか。筆者は以前から、どうすれば米国がファーウェイへの攻勢の手を緩めるのか、と何度となく聞かれてきた。そのたびに、次のように答えてきた。

 そのヒントは、中国通信機器大手・中興通訊(ZTE)のケースにあるのではないか、と。

 米政府は18年4月、対イラン・対北朝鮮の制裁に関連する合意にZTEが違反したとして、米国企業にZTEとの取引禁止措置をとった。これによって、半導体など基幹部品を調達できなくなったZTEは、スマホなどの生産ができなくなってしまった。追い詰められたZTEは、習近平国家主席に泣きつき、トランプへの口利きを要請。結局、ZTEはトランプに屈して、10億ドルの罰金を支払った上で、今後10年間、米国の内部監視チームを入れることにも合意した。

 おそらく、ファーウェイもこのくらいまでしなければ、トランプに排除を撤回させることは難しいのではないだろうか。

 ここまで見てきたような動きに加え、メディアでは、中国がニュージーランドとの貿易などで輸出を遅延させているという話が浮上したり、中国がオーストラリアからの石炭輸入を禁止にするという話も出てきたりしている。ニュージーランドもオーストラリアも5G(第5世代移動通信システム)でファーウェイ製品を排除する方向で動いており、中国による報復措置だとする向きがあるのだ。事実なら、やはり中国政府はファーウェイの後ろ盾になっていると示しているようなものだが。

 ちなみに英国でも、情報機関がファーウェイ製品について「リスクは管理可能」だと述べていることが話題になっている。そこで英国の元政府関係者に話を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。「私の意見では、英政府はファーウェイ製のスマホなどは禁止にしないかもしれないが、通信機器やルーターなどインフラに絡むものは禁止していくことになるだろう」

 とにかく、今、ボールはファーウェイ側にある。今後も米国を批判し、安全だと主張し続けるのか。もしくは透明性を高め、安全性を客観的に証明するのか。

 ファーウェイの騒動は、まだ始まったばかりなのである。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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