もっとも、過去には実際に、ファーウェイ製品から情報が抜かれていた話も出ている。17年には、エチオピアに拠点を置くアフリカ連合(AU)本部のコンピュータシステムから、過去5年にわたって、毎晩、真夜中の0時から2時の間に機密情報が上海に送信されていることが判明した。このシステムは、中国政府がファーウェイ製の機器やケーブルなどを使って設置したものだった。
またオーストラリアの大手企業でサイバー対策担当者だった知人は、「14年にオーストラリアの大手企業が、会社のネットワークからファーウェイ製品を介して不正にデータが中国に送られていることに気が付いた」と、筆者に述べている。それ以降、オーストラリアでは政府関係機関や大手企業などでファーウェイ機器を使わないよう情報を通達していたという。
こうしたスパイ工作についても、ファーウェイの任正非CEOや幹部たちは反論している。そして、ファーウェイが中国政府のスパイ工作に加担しているという指摘について、米国は何ら証拠を示していないと主張している。「盗んでいる証拠を見せろ」ということだ。
この点について、米国側の見方はどうなのか。実のところ、米国はスパイ行為を証明する必要はないと考えているという。
そもそも必要とあれば、国民の代表である議会議員らが連邦議会の委員会できちんとした捜査を行うことになる。現状、米国内では、その必要性すら議論されていない。過去にファーウェイが米国のメーカーなどから機密情報を盗んできた証拠もあるし、それはファーウェイ側も否定しないはずだ。そんな背景からも、米国側に言わせれば、今のところスパイ工作や中国政府とのつながりを証明するまでもない。
さらに付け加えれば、ある元情報関係者は、こんな「可能性」を筆者に話していた。「もし米国が新たにファーウェイによるスパイ工作などのハードエビデンス(動かぬ証拠)を持っていたとしても、それが米国側から中国に対するサイバー攻撃やハッキングなどで得たものならば、公表はできるはずがないですね。それ自体が、機密作戦だからです」
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