ファーウェイの「スパイ工作の証拠」を米国が示さない理由世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)

» 2019年02月28日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

「買わないなら損するだけ」ファーウェイの自信と反撃

 まずは、ファーウェイによる反撃攻勢だ。18年にファーウェイ問題が騒動になってから、それまでメディアにあまり登場していなかった創業者の任正非CEO(最高経営責任者)や同社幹部などがたびたびメディアの取材に応じている。その中で、ファーウェイ側は米政府による指摘について、ことごとく否定している。

 しかし、彼らの疑惑に対する回答は「玉虫色」だと言わざるを得ない。例えば、梁華会長は2月12日、カナダのトロントで記者の質問に応じ、「中国政府から外国の通信網へのバックドア(裏口)設置を要請されたとしても、法的に義務がないことを理由に拒否する意向を示した」という。また、「そうした要請をこれまで受けたことはないが、要請があったとしても拒否するだろうと話した」と報じられている(ブルームバーグ、2019年2月22日付)。

 ちなみにバックドア(裏口)とは、攻撃者が自由に不正アクセスできる、システムの“裏口”を指す。

 ただこの話はバックドアに限定した話であり、政府からの情報提供の要請に応じないとは言っていない。というより、中国企業には応じないという選択肢はない。

 中国には、17年に施行された「国家情報法」という法律が存在する。この法律は、民間企業も個人も政府が行う情報活動に協力しなければならないというものだ。中国政府からの「バックドア設置の要請」は断ればいいが、情報提供を断れば法律違反になるのである。

 さらに言えば、サイバー空間のスパイ工作で情報を盗むのは、バックドアを設置しなくてもできる。情報を盗む術はいろいろと考えられるのである。任正非CEOは、「良い製品を作れば売り上げの心配をする必要などない……買わないなら向こうが損するだけだ」と自社の技術力に自信を見せているが、その技術力をもってすれば、情報を抜く手段はバックドアを設置せずとも十分に可能だろう。

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